【2025年新年号特集号】サンパウロ州各所を巡り=先人の貢献に思い馳せ=在サンパウロ日本国総領事館総領事 清水享

清水享総領事

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 皆様、令和七年の新年をどのようにお迎えになりましたでしょうか。私にとっては、当地着任後二度目の新年となりました。昨年は、5月に岸田総理大臣が二国間の訪問としては十年ぶりにサンパウロを訪問され、日系社会との交流などを通じて当地と日本との関係強化が確認された年でありました。また、パンデミック後本格化した日本からの要人来訪も目白押しであり、地方自治体からは北海道、青森、岩手、長野、福井、和歌山、宮崎の各道県や大阪市から知事をはじめ要人が来訪され、当地の各県人会などでの記念式典が賑やかに開催されるなど大いに伸長が見られました。
 サンパウロ州は、面積でいえばブラジルの3%に過ぎませんが、ブラジル経済の約3分の1、人口の約5分の1を占める南米最大の要衝です。国土の3%といっても日本の本州と四国を合わせた規模ですから、州内の様々な都市はそれぞれ一大拠点をなしており、都市ごとに特色のある産業を通じてブラジル経済に貢献しています。農業についていえば、ブラジル全土で生産される花卉の半分ほどはサンパウロ州産であり、特にアチバイア市やアルジャ市で大部分が生産されていると聞きます。お正月料理に欠かせない蓮根は、実はブラジルでも収穫されるのですが、そのほとんどはサンパウロ市から300キロメートルほど北方にあるグアタパラ市で生産されています。そしてこれらの花や作物の多くは日系人の方々により作られています。サンパウロ市内のスーパーマーケットに行くと、シイタケ、シメジなどは日本語のまま「shiitake」「shimeji」として普通に売られていますし、お店によっては加茂茄子も「丸い日本のナスビ」として出ています。以上は、農業分野におけるほんの一例ですが、経済界、法曹界、文化・芸術やジャーナリズムの分野、官界、政界など様々な分野で、日系人の方々が活躍され、サンパウロ州のみならずブラジル全体の発展に大いに貢献しておられます。
 また、サンパウロ州内には、380もの日系企業が進出しています。私は、その内のいくつもの工場を実地に見学させていただきましたが、いずれにおいても必ず日系の方々が活躍し、中心的な役割を果たしておられました。日本のコンテンツや食品、酒類への人気も引き続きたいへん高いものがあります。サンパウロ市内目抜き通りにある「ジャパン・ハウス サンパウロ」は常に来場者でにぎわっており、2017年5月の開館以来、間もなく来場者は400万人を越えます。
 以上は、これまで30ほどのサンパウロ州内地方都市を訪問し、またサンパウロ市内の各所を訪問し、実際に見たり聞かせていただいたりしたものです。
 昨年のこの場で私は「先人敬慕」という言葉を記しました。日系の先人たちがこれまで果たされてきた大いなる貢献に、年始にあたり改めて思いを馳せつつ、今年一年が、当館が管轄するサンパウロ州、マット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スール州及び三角ミナス地域と日本との関係が一層増進される年となるよう、わたくしたち総領事館も力を尽くしていきたいと思います。
 本年は、日本とブラジルとの外交関係樹立130周年にあたります。そして4月にはいよいよ大阪・関西万博が開幕します。大いなる節目の年ですから、相互の交流も一層盛んになることが見込まれます。本年も、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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