2024年12月8日、サンタカタリーナ州北部のアラクアリ市が前日からの雨で非常事態を宣言するなど、同州内24市で水害が発生。パラナ州でも大雨による被害が出始めるなど、24年4月末~5月にかけて大水害が生じた南大河州ほどではないが、年末も気候変動による災害激化への懸念を思い出させる事態が続いている。
気候変動を肌で感じる国民
気候変動は何年も前からの国際的関心事で、近年は気温上昇や干ばつとそれに伴う火災増加に、降れば大雨的な大水害という、一見真逆の出来事が頻繁に起きて、気候変動を肌で感じることも多い。
一例は24年11月14日に発表されたクリマインフォ研究所の調査結果だ。2千人を対象に行われた調査では、気候変動が悪化すればブラジル経済に壊滅的な影響が及ぶと考えている人が91%いた。ブラジルがエネルギー転換を牽引するのを願うは79%、ブラジルは化石燃料の生産と消費排除に向けた経済発展への努力に焦点をあてるべきも64%いた。73%は政府が気候変動阻止を優先すべきと考えており、97%は2030年までに森林破壊を終わらせることを支持していた。
森林破壊が地球規模の気候変動の主要因と誤解している人は81%いた一方、石油やガスなどの化石燃料の生産企業が異常気象の責任を問われる可能性があると考える人は72%、2050年までに化石燃料の燃焼を止められるという人も71%いた。
クリマインフォ研究所のデルシオ・ロゴリゲス所長は、「ブラジル人は気候が人間の行動によって変化していることを認識していることを示す調査は多いが、今回は、気候変動の主な原因が化石燃料の燃焼であることを認識し、エネルギー転換がブラジルにとって経済的な機会となり得ることを理解している人の割合が高いことが判明した」としている。
ブラジルで起きている異常
気候変動に伴う地球温暖化は、コペルニクス観測所が11月7日に発表した気候変動サービスの報告書でも明らかだ。2024年10月の世界の平均気温は産業革命前より1・65度高く、産業革命前より1・5度以上高い状態は16カ月間で15回目となった。24年10月の気温は1991~2020年の平均気温を0・80度上回り、10月としては2番目に高く、異常とみなされている。
気候変動の影響は頻繁な干ばつや熱波に火災、南大河州で起きたような大水害だけではない。極地の氷や万年雪が解けて起きる海水面上昇もその一例だ。
海水面上昇は海岸線の後退、波による浸食による道路や家屋の崩壊なども引き起こす。ブラジルの海水面上昇の一例はパライバ州バイア・ダ・トラサン市で、2010年以降、20軒の家屋が崩壊。海岸線は毎年約6メートルずつ後退し、砂浜や市街地の一部も失われている。海が内部に広がることで川に海水が混じれば、公衆衛生上の問題や文化への影響など、計算不能な被害が生じることも大きな懸念事項だという。
24年11月に開かれた国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)用のデータによると、ブラジルでは毎日の最高気温の平均が3度上昇している所もあり、熱波の発生回数も増えている。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提示したブラジルの今後30年間の予測では、気温上昇が2度に至ると人の健康と農業に対する臨界閾値を超える可能性があり、水害を受ける人は2~3倍になる。
デング熱やマラリアなどの媒介疾患による死者も増え、アマゾンでは森林破壊や乾燥化、火災増加で森林面積の半分が失われるという。アマゾンの森林喪失は南米の雨の水の循環も左右する。
また、漁業資源は77%減り、国民総生産に対する収益への影響は30%に上り得る。気温が2度上がると、北東部の94%は砂漠と化し、大都市の人は水循環の中断と作物への影響に直面する可能性があるという。
ルーラ「COP30で転換を」
ルーラ大統領は24年11月のG20サミットで「COP30を転換のCOPに」と呼びかけた。現状維持では近いうちに元の状態に戻らなくなるターニングポイントも超え得るが、農業形態の変革、森林破壊抑制や化石燃料燃焼削減、エネルギー転換を図るなどでCOP30を元の状態に戻り始めるCOPにすることは、人類が生き残るために不可欠な努力だ。
環境省気候変動全国局のアナ・トニ局長はCOP29の終了後、パラー州ベレンで開かれるCOP30ではCOP29で引き裂かれた多国間プロセスに対する信頼の回復が必要と強調。
COP29では各国の短期的国益と政治的利益が優先され、気候変動への取り組みのための資金も必要額に程遠いもので終わり、COP30に向け、非常に大きくて困難な課題を残した。
2025年は気候問題には否定的なトランプ氏が米国大統領に就任するため、COP30での取り組みはより困難になると見られている。(鈴木倫代記者)