ヒ素ケーキ事件=容疑者、義母と不仲認めるも毒殺否定=妻と娘亡くした男性「心が痛む」

デイセ容疑者の供述内容を伝えるウルチモ・セグンドサイト
デイセ容疑者の供述内容を伝えるウルチモ・セグンドサイト

 昨年12月23日、リオ・グランデ・ド・スル州トーレス市で、家族が作ったクリスマスケーキにヒ素が盛られ、3人が死亡する事件が起きた。7日付ウルチモ・セグンドサイト記事(1)によれば、義母ゼリ・ドス・アンジョスさん(61歳)が作ったクリスマスケーキに毒を盛って3人殺害と3人殺人未遂をした容疑で、10日間勾留中のデイセ・モーラ・ドス・アンジョス容疑者は警察の取り調べで犯行を否定した。その一方で、義母との間に亀裂があったことは認め、義母や家族が死ぬことを望んでいたわけではないと語ったと報じられている。
 また捜査によると、クリスマスケーキに使われた小麦粉にヒ素が混入されていたことがわかったと、グローボTV、RBSTVなど地元メディアが報じた。
 事件前後にデイセ容疑者がヒ素についてネット検索していた履歴があることから、捜査に新たな展開を見せた。一方、彼女の弁護側は、この検索結果は単なる好奇心によるもので、彼女の逮捕は捜査の一環だと主張した。
 容疑者の供述では、義母ゼリさんと金銭的トラブルや意見の食い違いで不仲であったことが明らかになっている。また、SNSで義母をブロックし、彼女のことを「Naja(コブラ)」と呼んでいたことも証言した。しかし、昨年9月に亡くなった義母の夫パウロさんや他の家族とは良好な関係だったと話す。
 パウロさんは、粉ミルク入りのコーヒーを飲み、食中毒を起こし亡くなった。デイスさん夫妻はパウロさんが亡くなる前に彼らの自宅を訪ねており、警察はパウロさんの死も今回の事件と関係性があるか捜査を行っている。
 専門家総合研究所(IGP)によると、最も高濃度のヒ素が検出されたのはケーキを2口食べたゼリさんの血液中だという。
 7日付リオ・グランデ・ド・スル州地方紙ABC(2)は、同事件で妻ノイザさんと娘タチアナさんを亡くしたジョアン・ジョアキン・ドス・アンジョスさん(70歳)を取材し、その言葉を次のように伝えた。
 ジョアンさんは失意の中で、妻ノイザさんが営んでいたカノアスにあるラ・サール大学の小さなスポーツ用品店を再開した。「少しでも彼女らの死について考えるのをやめるためにも店を再開した」と事件のことを振り返った。
 ケーキが好きだというジョアンさんは事件時、たまたまケーキを食べなかったという。「その気分じゃなかったから食べなかっただけ。後で食べようと思っていた。でも、僕がコーヒーを飲み終わる前に次々と皆が体調を崩し始めた」と語った。
 その後の出来事は瞬く間に起きたという。「私たちはすぐに病院に駆けつけた。医者はなにかしらの細菌が原因だと話したが、一人目の死亡が確認されるとそれ以上何も言わなかった」と続けた。
 毒殺の疑いが出たとき、ジョアンさんは、良好な関係を築いていた家族の中で危害を加える人がいるとは信じられなかったという。
 デイセさんの逮捕を聞いたジョアンさんは「いつも一緒に笑ったり冗談を言い合っていた仲だったから信じ難い。だが、警察に連行されたということは我々が立ち入りできない何かがあったんだろう」と語った。
 更に「母親、彼のために無償の愛を注ぐ祖母、教師として何でも教えてくれた伯母を一度に失くした10歳の孫のことを思うと心が痛む」と話した。
 ABC紙が、事件を起こした容疑者に怒りや憎しみがあるか問うと、「何を言っても彼女たちは戻ってきません。何もすることができません。ただ生き延びるだけだ」とジョアンさんは語った。

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