ヒ素ケーキ事件=鬼嫁がネットでヒ素購入し混入か=9月死亡の舅遺体からもヒ素検出

事件の人物相関図
事件の人物相関図

 リオ・グランデ・ド・スル州トーレス市で昨年末、嫁が姑の家の小麦粉に猛毒ヒ素を混ぜ、知らずにクリスマスケーキを作った姑が自分の姉妹ら家族に食べさせた結果、3人が死亡、3人が入院した痛ましい事件の続報が続いている。それに先立つ昨年9月、姑の夫、舅のパウロさんは食中毒が原因で亡くなったとされていた。だが今回の事件を受けて、科学警察研究所の捜査官が8日、パウロさんの遺体を掘り起こし、検査した結果、ヒ素が検出されたと10日付地元紙メディアのゼロ・オラ(Zero hora)(1)が報じた。嫁には計4人の殺人容疑がかけられ、更に波紋が広がっている。
 昨年12月23日、故パウロさん一家が家族団欒中にヒ素が含まれたクリスマスケーキを知らずに食べて3人死亡、3人が入院する(2人が既に退院)事件が発生した。パウロさんの息子嫁デイセ・モウラ・ドス・アンジョス容疑者に、ヒ素を盛った疑いがかけられ捜査が進められている。
 10日付CNNブラジル報道(2)によれば、ケーキ事件に関して、デイセ容疑者が主な標的としたのは姑ゼリ・ドス・アンジョスさんであることを市警は明らかにした。その理由は、ゼリさんが600レアル(1万5千円相当)をデイセ容疑者に貸した際、数日後に返済したにも関わらず、その時の対応が同容疑者の怒りを引き起こしたという〝古傷〟にあると警察は見ている。
 デイセ夫妻は、昨年8月31日に同州アロイオ・ド・スルにある夫の実家訪問時に、バナナと粉ミルクを持っていった。これを摂取した後に体調を崩したパウロさんとゼリさんは入院し、パウロさんは嘔吐、下痢、胃出血で死亡した。当時は食中毒の症状と解釈されていたため、警察は事件性を疑わなかった。
 だが今回、ゼリさんの2人の姉妹と姪がクリスマスケーキを食べた後に死亡したことから事件の関連性を疑い、捜査を行った。毒入りケーキ事件の当初、警察はケーキを作ったゼリさんを容疑者として疑っていた。しかし捜査中、デイセ容疑者が「姑との不仲が20年以上続いている」と証言したことで嫁の方を疑い始めた。
 警察が関係者に事情聴取した結果、誰に聞いても「ゼリさん姉妹の関係はとても良好」とされた反面、「姑ゼリさんと嫁デイセさんの関係は対照的」と述べられた。
 ある証人は、容疑者のことを「人を裏から操る人」と称し、ゼリさん夫妻と息子(デイセ容疑者の夫)を遠ざけようとしていたと話した。別の証人によると、デイセ容疑者はゼリさんに対して「家族全員を棺桶で見ることになる」と言ったことがあるという。
 デイセ容疑者は取り調べで、毒を盛ったことは否定したが、姑ゼリさんとの不仲については証言し、姑のことを「naja(コブラ)」と呼んでいたと認めた。ゼリさんが、自分の息子(容疑者の夫)や孫とではなく、自分の姉妹とその家族とクリスマスを過ごすことに腹が立ったと話した。
 科学警察研究所によると、ケーキに使われていた小麦粉にヒ素が含まれていた。ある被害者の身体には、人を殺すのに十分な350倍の濃縮が含まれていたことがわかった。捜査の結果、同容疑者がヒ素をネット購入して郵送で届いたことが分かったと報道された。
 先月23日に、ゼリさんによって作られたクリスマスケーキを食べた人は数分後に、嘔吐、下痢、出血の症状が出た。24時間以内にゼリさんの姉ネウザさん(65歳)、妹マイダさん(59歳)、ネウザさんの娘タチアナさん(47歳)が死亡した。
 姑ゼリさんは10日現在も入院中で、亡くなったネウザさんの10歳の孫は一時、集中治療室に入院したが、退院許可が出されている。7日付ゼロ・オラ紙(3)によればデイセ容疑者は逮捕される数時間前、何食わぬ顔で、姑ゼリさんを病院まで見舞に行っていた。
 デイセ容疑者は、警察の「毒物を購入したか」という尋問に対して否定したが、「マタマト(農業用の除草剤)」と家用のネズミ駆除剤を購入したことを供述した。
 警察が「人間に致命的な毒」をネット検索したか問うと「チュンビーノ(殺鼠剤名)」とネズミ駆除用毒物が検索結果に出てきたと話した。なぜ検索したのかと警察に理由を尋ねられ、同容疑者は「パウロさんは細菌感染で死亡したと診断されたが、ゼリさんは毒物による殺人だと疑ったため調べた」と主張した。これは9月の出来事だ。
 12月24日に再度検索したことについて、義母や彼女の姉妹らが毒を盛られたことを知り、死因の症状を理解するために、ヒ素について調べたと供述している。そして同容疑者は「相続する財産も何もないのだから誰かに毒を盛る動機などない」と付け加えた。

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