「ブラジルでは指でVマークをすると、ヴィクトリー(勝利)以前に『赤いコマンド(o Comando Vermelho CV)』を示す」――数字の2や3のジェスチャーポーズをしながら写真を撮ってSNSに上げただけで、罪のない人たちが犯罪に巻き込まれている。これらはセアラ州やバイーア州、マット・グロッソ州で、犯罪組織に敬意や挑発を示すジェスチャーと解釈され、暴力的な死者が出ているということだ。1月10日付テーラ・サイトなど(1)(2)が報じた。
ブラジル公安白書によるとブラジルには「刑務所を拠点とする」72の犯罪組織が存在する。指で数字を示すジェスチャーをすることは、大きな二つの犯罪組織「tudo com 2」と「tudo com 3」を暗示するために主に犯罪組織、警察、ファンク歌手、研究者らによって使われる。
数字の3は「三文字の頭文字PCC」、サンパウロで生まれた「州都第一コマンド(o Primeiro Comando da Capital PCC)」を意味する。2は、同様に二文字の「CV」で、リオ・デ・ジャネイロ発祥の「赤いコマンド(o Comando Vermelho)」だ。
この2グループと3グループは各州の様々な組織を傘下に置いているため、2本指や3本指を使ったジェスチャーは、それぞれのグループを示すとされている。
しかし、2グループの強い地域で、たまたま3グループのジェスチャーをすることは「挑発」として誤解されることがある。対立関係が緊張状態にある場合、敵派閥から攻撃されることすら起きている。
1月8日付G1によれば、この3本指のジェスチャーをした写真をSNSに投稿したことで、20歳のマルコス・ヴィニッシオス・アルヴェス・ゴンサルヴェスさんがバイーア州フェイラ・デ・サンタナで発砲され亡くなった。
また、本紙昨年12月20日付「セアラ州=サントスから観光中の少年殺害」(https://www.brasilnippou.com/2024/241220-18brasil.html)で報じた通り、先月父親とサンパウロ州サントスからセアラ州にある観光地ジェリココアラに旅行中、誘拐され遺体で見つかったエンリケ・マルケス・デ・ジュズスくん(16歳)も3本指のジェスチャー写真が原因で殺された。写真を見ると、親指、人差し指、中指の三本を胸の前で伸ばすジェスチャーだ。
バイーア州出身のラッパー、ドゥケーザもジェスチャーを使用したことでビデオクリップを削除する事態が起きた。
テーラ紙記事によると「tudo com 3に属し、バイーア州にある犯罪組織ボンデ・ド・マルーコ(Bonde do Maluco BDM)は、ネット上で「サーフィンブランドのロゴにあるような『シャカサイン(ハワイで使われるジェスチャー)』で写真を撮ったからといって殺害することはない」と否定している。
犯罪組織「tudo com 2」CVの傘下グループはマラニョン州、ゴイアス州、サンタカタリーナ州、エスピリットス・サントス州ヴィトリアにも点在する。リオ・グランデ・ド・スル州の犯罪組織「バーラ・ナ・カーラ(Bala na Cara)」や「ボンデ・ド・アジェイタ(Bonde do Ajeita BA)も「tudo com 2」に属す。
リオ・デ・ジャネイロの犯罪組織「アミーゴス・ドス・アミーゴス(amigos dos amigos ADA)」は2本指のジェスチャーで「L」を示して、2000年代頭に失踪したパウロ・セザール・シルヴァ・ドス・サントス(呼称リーニョ・Linho)に敬意を示している。ADAは犯罪組織「テレセイロ・コマンド(Terceiro Comando TC)」から分裂したグループで、リーニョはこれらの中心人物だった。
サンパウロ州立大学(UNESP)の公共安全と共同関係研究所のエドアールド・アルマンド・メジーナ・ダイナ教授は論文で「tudo com 2」と「tudo com 3」のリストを挙げている。しかし、このリストに全てのグループが記載されているわけではない。犯罪組織の仕組みや関係性は非常に複雑で、地域ごとに異なる派閥や決め事が存在している。