兵庫県人会=日本の被災者に想い寄せる=阪神淡路大震災の仏式法要=ブラジル人僧侶読経の中、厳粛に焼香

 ブラジル兵庫県人会(松下大谷瞳マルリ会長)が施主となりサンパウロ市の佛心寺で17日午前10時から、阪神淡路大震災30年仏式法要が行われ、県人会員や震災に縁のある人ら約30人が参列した。パラグアイのイグアス移住地に所在する眞應山拓恩寺のブルノ正栄住職が読経する中、一同は厳粛に焼香しながら30年前に母県を襲った大災害の被害者に想いを寄せた。

 法要後、松下会長は参列者への挨拶で「ここには震災時にあそこにいた人も、家族が犠牲になった人もいる。震災直後に県人会が義援金を呼び掛けて最終的に15万ドルを県庁に送金し、遠い日本の被災者の皆さんに我々の想いを届けた」と振り返った。当時県人会に寄付金を寄せた人の名前が、今も神戸の日伯協会内にはプレートとして刻まれているという。
 本紙が松下会長に法要を実施した理由を尋ねると、「あれ以来今まであまり法要をしてこなかった。30周年の節目なので『今回はやったらどうか』と提案したら、皆が賛成してくれやることになった」とのこと。
 震災時に神戸市で保険会社に勤務していたという唐木田光男さん(59歳、東京都出身)=サンパウロ市在住=は「あの時のことは今でも強い印象に残っています。30周年という節目なので法要に参加しようと思いました」と振り返る。
 震災直後の2週間、幹線道路が全て遮断されていたので、尼崎市の社宅から会社のある神戸市まで20数キロを自転車で通った。「電車や表通りが全て通行止めだったので、裏道裏道を探して自転車で行くんですが、とにかくグシャグシャに全壊した家、1階がペシャと潰れた家などがあちこちにあり、それを横目に見ながらペダルを漕ぎ、何とも言えない気持ちになったのを昨日のことのように覚えています」としみじみ語った。
 インスタグラムのサンパウロ市リベルダーデ区紹介アカウント「Achados da Liberdade」を運用する金子エジソン直人さん(58歳、2世)は当時、大阪でデカセギをしていた。「朝6時前すごく揺れたのを覚えている。住んでいるマンションが壊れるかと思ったぐらい。当時は携帯電話がなく、ブラジルの家族が心配しているかもと思って電話ボックスの列に並んだが、なかなか掛からなくて困った」と当時を思い出す。
 伊丹市出身の県人会員の岸本晟(あきら)さん(84歳)は、「あの時は、実家のすぐそばにある阪急電鉄伊丹駅で電車がひっくり返っている様子がニュースに流れ、本当に驚いた。父親は近くの体育館で避難生活をし、1カ月後に私も駆け付けた時、自宅アパートの中はまだ全てのものが床に散らばっている状態で、地震のすごさを痛感した」と思い出す。
 79年に関西学院大学へ県費留学した阿部和子さん(69歳、2世)は「震災のニュースを見て、留学当時にお世話になった人が心配になり、電話しても最初は繋がらなかった」と思い出す。
 曹洞宗大本山總持寺で9年間修行したブラジル人僧侶ブルノさんは「震災法要は日本なら本山などでやるもの。サンパウロで貴重な体験をさせてもらった」と手を合わせた。

参列者らが最後に記念撮影

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