ブラジルを含むラ米およびカリブ海地域の10カ国は、トランプ大統領の移民大量強制送還計画に対して「深刻な懸念」を表明した。これらの国々は、移民の人権を守ることが最優先であり、人道的なアプローチを取るべきだとの立場を明確にしている。
共同声明は17日、ブラジル、ベリーズ、コロンビア、キューバ、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、メキシコ、ベネズエラの外交担当者によって公表された。同文書内では米国やトランプ大統領についての直接的な言及はなかったと同日付AFP通信など(1)(2)が報じた。
一方、同声明発表の前日、トランプ氏はスピーチで「すべての不法移民は、何らかの方法で母国へ帰す」と移民政策へのこだわりを再表明した。移民を犯罪者として扱い、米国内の治安悪化の原因として移民を挙げ「移民の52%がすでに1人以上を殺した」と主張するなど、移民に対する厳しい非難を行った。特にベネズエラからの犯罪組織が不法に米国に侵入しているとし、移民を「恐ろしい人々」と呼んだ。これにより、移民問題に対するトランプ氏の立場が一層明確になった。(3)
10カ国の声明文は、移民の強制送還が人権の基本原則に反し、特にその背景にある経済的、社会的、政治的要因を無視する点を問題視している。多くの移民が貧困、暴力、政治的弾圧などの理由で母国を離れ、他国に移動していることを踏まえると、単に不法移民を強制的に送り返すことは根本的な解決にはならないと警告。移民を犯罪者として扱い強制送還することは人権侵害であり、国際法に反する可能性があると強調している。
多くの移民は、移動の過程で人身売買や暴力的な犯罪組織の脅威にさらされており、こうした犯罪者から移民を守ることが重要だと指摘。強制送還がこれらの犯罪組織の利益を助長する結果になることを懸念し、その対策が不可欠であると主張している。
声明では、移民問題に対する広範な議論の場を提供し、解決策を模索することを目的として、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)における移民問題に関する会議の再開を提案している。このような国際的な議論の場を設けることで、共通の認識が形成され、各国が協力して解決に向けて動くことが期待されている。
トランプ氏の移民政策は、選挙戦での公約を実現するものであり、強制送還の実施を予告している。ニューヨーク・タイムズ紙と市場調査会社イプソスによる世論調査によれば、米国内では移民の強制送還に賛成する声が55%に達しており、特に不法に入国した移民に対する強制送還には高い支持が集まっている。犯罪を犯した不法移民に対しては87%が強制送還を支持しており、新大統領の政策は一定の支持を受けていることが明らかとなった。(4)