茶道裏千家ブラジルセンター(林宗一代表)は19日、サンパウロ市リベルダーデ区のブラジル日本文化福祉協会ビル(文協ビル)内同センター茶室「伯栄庵」(Rua São Joaquim, 381, 4º andar)にて、新年最初のお茶会「初点」を行った。お茶席は、4席設けられ、お床には、裏千家当代坐忘斎家元の書、「道」の軸が掛けられた。さらに、鵬雲斎大宗匠が手ずから削った煤竹の茶杓、銘「万国共和」が用いられ、格式を添えた。正客として参加した在サンパウロ総領事館の清水享総領事ほか、多くの来賓、来場者が季節の主菓子とともに、茶を堪能した。
この日は、日本政府事業「草の根文化無償資金協力」によって、張替られた畳のお披露目も行われた。サンパウロ州レジストロ市で50年以上の伝統を持つ山村畳オリジナル社で張り替えられた。まだ染み一つない畳は実にすがすがしく、昨年70周年を迎えた裏千家ブラジルの今後益々の繁栄を祝しているようだった。70周年を記念した書籍『日本文化ーそして茶の湯』(ポルトガル語版)も当日来場者に配布された。
午後からは同文協ビル2階貴賓室にて、新年会と70周年式典が開催され、160人以上が参加した。清水総領事から林代表へ伯栄庵畳の正式な引渡式が行われたほか、ブラジルでの裏千家茶道の普及に尽力した功労者への表彰が行われた。その後、会津喜多方の弥右衛門の樽酒で鏡割りを行い、新年を祝った。
式典では、裏千家千宗室当代家元と、千玄室大宗匠からの祝辞も日本語とポルトガル語で読み上げられた。1954年以降、3回ブラジルを訪問している千玄室大宗匠は「70年にわたり、伯栄庵を拠点に世代や民族の垣根を超え脈々とお茶の心が受け継がれていることは感慨深い」と地球の反対側での裏千家の発展を頼もしく祈念した。
モジ文協の茶室を支部として毎週稽古をする香西宗喜さんは「70周年を迎えられて本当に嬉しい。モジではコロナ禍で生徒が激減したが昨年は11人まで回復し、3割はブラジル人になりました。亡き武田宗芳先生の教えをできる限り続けるつもり」と語った。
同ブラジルセンターは1954年、サンパウロ市創立400周年を記念してイビラプエラ公園に日本館が開所した際に、大宗匠が来伯して当地に支部をと指示したことを受け、有志が稽古を始めたことから始まった。移民50周年の1958年に最初の伯栄庵ができ、77年に現在の形に移築されたことから、1978年に林宗慶駐在代表が派遣され、現在も指導を続ける中、当時2歳だった林宗一氏(49歳)が現在駐在代表となっている。
林宗円副代表は「日々、日本文化をブラジルに伝えることの重要性を痛感する。茶道に関心を持つブラジル人にはインテリが多く、日本の精神性を深く理解しようとしてくれる」と感謝した。裏千家には14海外拠点、100地区以上の海外支部があるが「ブラジルは大きい方」とのこと。同副代表によれば70年間で累計1万人以上が茶道体験をした。
父親が会創立メンバーで幼少時からお茶をたしなんできた今回の実行委員長、武田宗清さん(85歳)は「親の代から数えると武田家では4代に渡って茶道を実践している。母が厳しい人で、『お金儲けの頭ではダメ。真の日本文化を知るために死ぬまでお茶の勉強を』と繰り返し言われた。頭がモヤモヤしている時、お茶をたてるとスッキリする」と笑顔を浮かべた。
昼食会、抽選会の後には、ブラジル日本津軽笛大使のコッペデひろみさんによる笛の演奏や藤間流の皆さんによる「獅子舞」と「牡丹獅子」の舞で華やかに会が締めくくられた。