流派を超えた秀句を集めた初の『ブラジル俳句選集』を後世に残そう――そんな共通した想いを抱えた俳人ら13人の編纂委員が昨年5月から会議を行っている。日伯外交関係樹立130周年を記念して今年日本で発刊することを目指しており、各委員が持ち寄った推薦句計約3千句の中から、現在1千句余りに絞り込んでいる最中だ。
4日に行われた第8回会議で、互選により最高得点となった句は12点の「夕ざれや樹かげに泣いて珈琲もぎ」(瓢骨〈上塚周平〉、1910年頃)、10点の「子を背に棉を摘みたる星明り」(須賀あつ子、2010年)、9点は「雷や四方の樹海の子雷」(佐藤念腹、発表年不明、俳誌『ホトトギス』巻頭)となっている。
代表は広瀬芳山さん、事務方を宮川信之さんが務め、小斎棹子さん、吉田しのぶさん、串間いつえさん、太田映子さん、児玉和代さん、西谷律子さんら各流派を代表する俳人が参加する。伊那宏さんも現代俳句を概観する文章や推薦句を寄せた。
今までは各流派や個人の句集だけだったため、これを機に俳句界全体を俯瞰して流派の隔てなく選句、時代区分ごとに編集し、必要に応じて背景・語句などの解説も併記した内容にする予定だ。
出版の目的は「主にブラジル移民・移住者にとって感銘を受ける秀句を選び、後世、及び日本の読者にも共感されうる俳句選集を出版する。ブラジルで俳句活動が始まってから100年を越えようとしている今年に、このような選集を編纂するのは逃す事の出来ない機会であり、大きな意義があると考える」というもの。
構成としては大きく分けて「移民初期~戦前」「戦後~1979年」「1980年~現在」となっており、それぞれに年代の雰囲気を感じさせる句を選んでいる。当地在住者以外の俳人の句でも、当地に縁のある人なら選句対象とする。花鳥諷詠(有季俳句)とそれ以外(現代俳句、無季、自由律)を含める。
この出版費用を捻出するため、4月頃から日本国内の有志に向けてクラウドファンディングをする予定。それまでに『ブラジル移民俳句』の知名度を上げるという意味で、1月末から毎週1本ずつ、移民俳句の動画をブラジル日報SNSで紹介していく。
予定では、近々選句の完了、3月までに俳句の整理・配列、説明文(コロニア語、時代背景など)、年表、5月までに編集、序文などの依頼、クラウドファンディング、9月までに出版交渉、印刷となっている。
第1弾は吉田しのぶさんによる「棄民とは辞書になき語よ天の川」(広田ユキ)解説を1分動画にし、来週公開される。今後、編纂委員には各2句を選んでもらって解説動画を作る予定で、続々と公開される。
刊行主旨に賛同してブラジル国内で寄付を希望する人は、宮川(ワッツアップ11・98644・4612、メールservice.miyagawa@gmail.com)まで連絡を。