元在サンパウロ総領事で、現在外務省中南米局長を務める野口泰氏(山口県出身、59歳)が21日、ブラジル日本文化福祉協会(文協)貴賓室で著書『遠い異国の地サンパウロで日本を想う』(CIATE刊行)の刊行祝賀会を行い、約100人が集まって刊行を祝った。
野口局長は1990年に外務省に入省。在サンパウロ総領事を2017年から2020年まで3年弱務め、防衛省に2年間出向した後、在サンフランシスコ総領事、2023年9月から外務省中南米局長に就任した。昨年5月、岸田総理来伯時には同局長として同行していた。
石川レナト文協会長は「野口さんは、私の会長就任1年目の在サンパウロ総領事を務められていたので、とても印象深い。彼がコロナ禍前に81カ所も地方の日系集団地を回った記録を持っている。日系社会をよく見て回った野口さんだからこそ、この本を書けた。アミーゴの本出版を心から喜びたい」と出版を祝った。
野口中南米局長は「皆さんに再びお会いできて嬉しい。中南米全体を担当しているが、日本国内でブラジルの重要性が高まっている。中国やロシアの問題がある中、日本外交の最重要課題の一つは、いかに法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するか。こうした中で、価値原則を共有するブラジルと共に、こうした秩序を維持強化する必要性は高い」と語った。
さらに「日系社会も活発で嬉しい」とし、「今般、二宮先生のおかげで私のサンパウロ在勤中の経験の本が出版され大変ありがたく思う。ポルトガル語版を通じて、私の経験が多くのブラジル人に伝わることができれば嬉しい」と述べ、「本年は日伯外交関係130周年。ルーラ大統領訪日も予定されており、日本からも要人の訪問を検討している。皆さんの力をお借りして130周年を盛り上げていきたい」と呼びかけた。
来場していたブラジル日本商工会議所の鈴木ワグネル副会頭は「ブラジル体験を本にする総領事はとても珍しい。野口さんはブラジルや日系社会を深く見ている」と感心していた。
この本は、ポルトガル語147頁と日本語110頁のバイリンガル。第1章「ブラジル日系社会の現状及び日系社会への支援・連携」では笠戸丸の歴史や主要日系団体の紹介から始まり、日系社会が日本にとって重要であり、いかに支援・連携する意義があるかが論じられている。
第2章「ジャパンハウス・サンパウロを軸とした交流活動の広がり」ではサンパウロ市の主要文化施設として認知されるまでの経過、ルーベンス・リクペロ名誉館長や運営委員の活躍の様子、南米の情報発信拠点となった現状を報告する。
第3章「ブラジル経済状況及び日本企業の動向」では、当地のビジネス環境を丁寧に解説し、日伯経済関係を外観、日本企業の動向から新型コロナが進出企業に与えた影響まで解説する。
これらの文章は元々ブラジル中央協会サイトに散発的に掲載されていたが、二宮氏が読んで本にする価値があると考え、1冊にまとめて二カ国語出版する運びとなった。同書は国外就労者情報援護センター(CIATE、R. São Joaquim, 381 – 1º andar, sala 11)で無料配布中。