変化期にある貿易バランス=欧米離れ、BRICS接近

ブラジル貿易におけるBRICSのシェアが拡大している(Foto:Oliver Flöricke/unsplash)
ブラジル貿易におけるBRICSのシェアが拡大している(Foto:Oliver Flöricke/unsplash)

 ブラジルの貿易バランスは大変動期を迎えており、これまで主導的だった米国や欧州連合(EU)に加え、中国やインド、ロシアなどのBRICS諸国が影響力を強めている。最近の研究によるとBRICS諸国、特に中国は、ブラジルにおける生産財供給において顕著な進展を見せ、欧州のシェアが減少した。機械設備や部品、原材料の生産財の供給において、BRICS諸国の割合が増加し、欧米のシェアが減少していると30日付のヴァロール紙(1)が報じた。
 予算企画省傘下の応用経済調査所(Ipea)の経済学者レナト・バウマン氏が、ブラジルの生産財供給の変化と、ブラジル経済への影響、さらに今後の地政経済的な動向に与える影響について分析した。
 最終製品を生産するために必要な資源である生産財の供給源に注目した研究で、地政経済的な観点から見れば、生産過程におけるこれらの財の使用頻度が高いほど、その国々はブラジルの経済、さらには政治に対する影響力を強化できるとされている。
 分析は、パンデミック前後の二つの期間を対象として行われ、主要な焦点はこれらの財の供給源における変化に関するものである。
 BRICSがブラジルの総輸出に占める割合は、2018〜19年と21〜23年を比較して、34・6%から35・6%に増加した。逆に、ブラジルから欧米向けの輸出は、27・2%から25・2%に減少した。
 ブラジルの輸入品においても欧米製品は相対的に減少し、その割合は同時期に37・4%から34・7%に落ち込んだ。これに対し、BRICSは26%から32%にシェアを拡大した。特に生産財に関しては、欧米からの供給は37%から約35%に落ち込んだ一方で、BRICSのシェアは30%から35%以上に顕著に増加した。
 中でも化学品分野では、パンデミック前には欧米製品のシェアがBRICSのそれを65%上回っていたが、最近ではその差は12%にまで縮小した。製造業の分野では、BRICSのシェアは28%から65%に増加した。
 これらの変化は、単なる貿易の動向にとどまらず、ブラジルの生産構造における地政経済的な変化を示唆している。生産財供給の源泉としてのBRICSの台頭は、ブラジルが今後、これらの国々の政策や経済的動向に対してより敏感になることを意味しており、その影響力は経済だけでなく、政治にも及ぶ可能性がある。
 バウマン氏は、こうした変動がブラジルの生産構造に与える影響を、パンデミック後の時期における国際的な競争の激化と関連付けて考察している。世界の主要国間で「意見の不一致」が顕著になりつつある中、BRICS諸国と欧米諸国との関係の変化が、ブラジル経済に与える影響を無視することはできないと指摘する。
 EUとメルコスル間の商業協定が、競争の激化を背景に早期に承認される可能性が高くなっていることも指摘。トランプ米大統領の政策がブラジルをはじめとする他国に対して圧力をかけ続ける中で、ブラジルは今後、より複雑な地政経済的な選択を迫られることになると指摘した。

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