スイスの山岳リゾート地クラン・モンタナに、ブラジル人女性が創業した高級ホテル「グアルダ・ゴルフ・ホテル&レジデンス」がある。ここは、冬のスキーシーズンには欧州やインド、ロシアなど世界各国の富裕層が約5万人も訪れ、隣接するゴルフコースを目当てにジョージ・クルーニーやロジャー・ムーアといったセレブたちも足を運ぶことで知られている。同ホテルを一から築き上げた敏腕実業家として創業者ナチ・フェリ氏が28日付ヴァロール紙(1)で紹介された。
ナチ氏は、人口1万人に満たないアルプスの小さな町に、夫でありビジネスパートナーのジャンカルロ氏と共同で豪華リゾートを設計建設した。1万4千平方メートルの敷地内に五つの建物を配置し、美しい自然に囲まれた贅沢な空間を提供。客室にはスパやプール、映画館、ゲームルーム、書斎など極上の設備が完備され、ゲストに究極の快適さを提供している。
このホテルが特に注目されるのは、単なる豪華さにとどまらず、ナチ氏がゲスト一人一人に対して細やかなサービスを提供している点だという。彼女の手がけるサービスは、世界の高級ホテルでもトップクラスに位置し、食事や寝具、さらには買い物や旅行の手配に至るまで、まるで自分の家にいるかのような心地よさを提供。細部にわたる配慮により、リピート率は40%以上に達している。
ナチ氏は、ブラジルからの客にも注力しており、館内レストランではコシーニャ(チキンコロッケ)やポン・デ・ケイジョ(チーズパン)など、ブラジルの代表的なスナックも提供。子供のゲストのために、元サーカス団員の俳優を手配し、「スパイダーマン」を演出するなど個別の要望に応じた特別なサービスが絶賛されている。
ナチ氏の経歴はまさに起業家精神に満ちている。彼女は弁護士の父と教師の母の下、サンパウロ州バウルーで幼少期を過ごし、高校卒業直前に米国留学を経験し、全日制学校やホテルサービス付きの居住用コンドミニアムを目の当たりにして感銘を受けたという。
ナチ氏は米国で軽食店を開店し、行列ができる人気を誇ったが、その店を閉じてスイスに渡ることを決意。世界的に評価されているホテル業専門学校「レ・ロッシュ」でホテル経営を学んだ。
帰国後、ホテルのコンサルタントとしてのキャリアを積んでいた最中の1994年、彼女は医師のジャンカルロ氏と出会った。二人は意気投合し結婚。クラン・モンタナに移住し、最初の10年で小さなアパートを建設し、販売して生計を立てた。
ナチ氏には、米国で見たホテルサービス付きの居住用コンドミニアムを作るという夢があった。ある時、ゴルフコースの前に売りに出されていた古いホテルを見つけ、理想の場所を見出したという。
1億ドルを投資し、2009年に「グアルダ・ゴルフ・ホテル&レジデンス」をオープンさせた。彼女の目標は、訪れる人々にとって「第二の家」となる場所を作ること。夫が彼女の起業家精神を理解し支えてくれたことが成功の理由と振り返った。