ブラジルの日本語教育の歴史を築いてきた教師陣が歩みを振り返るイベント「日本語教育フォーラム 教えて!センパイ」が1月31日、サンパウロ市内のジャパンハウスで開かれた。ブラジル各地から日本語学校、大学などで教鞭を振るった“センパイ”先生7人が登壇し、また参加者と合同で日本語教育の未来について議論を深めた。
国際交流基金サンパウロ日本文化センター(FJSP)の主催。今年はブラジル政府が認可した初の日系教育機関「旧大正小学校」の創立110周年の節目にあたり、最初の記念イベントとなった。
ゲストスピーカーを務めたのは、高松シズ先生(トメアス日本語学校)、矢田正江先生(ブラジリア日本語モデル校)、鈴木妙先生(サンパウロ大学)、吉田千鶴子先生(CEL Hiroshi Sumida)、金子慶子先生(同)、酒井万里子先生(めぐみ学園)、酒井歩先生(同)。パネルディスカッションでは、教師になったきっかけを問われ「頼まれて」「日本語講座にたまたま入学して」など、思いがけず日本語教育に携わるようになったという回答が多かった。
それでも一人ひとりが熱い思いを持って教育に向き合い、「次世代に継承したいものは?」という質問には「言葉以上に文化の継承で、日本人の勤勉さや真面目さといった人間性を継いでほしい」(吉田先生)。「どう日本の価値観を伝えるか?」の質問には「文化と言語は分けられない。なぜ敬語を使うのか?適した振る舞いが必要なのか?間接的に日本文化を教える」(鈴木先生)などと長年、日本語教育に携わってきた教師ならではの視点での回答があった。
会場には日本語教師志望の参加者もおり、「日本でもブラジルでも大切なのは人間性。愛情と熱意がなければ学習者はついていかない。どこでも一番大事なことで、日本を好きになってもらわないと学習者のモチベーションは上がらない」(矢田先生)と激励する場面もあった。
午後は参加者がグループになって交流し、「地域の一世、日系人と協力して日本語に触れるチャンスを」「自分の基礎を固める」などの意見があり、次世代を担う教師らがセンパイ教師から多くを学び、今後の指導へと意欲を高めた。