性的虐待の被害者が警官に=自らの手で加害者を逮捕

ジェシカ・マルチネリ氏(本人のインスタよりhttps://www.instagram.com/p/CbdboDzlPN-/)
ジェシカ・マルチネリ氏(本人のインスタよりhttps://www.instagram.com/p/CbdboDzlPN-/)
著書『A Calha(側溝)』
著書『A Calha(側溝)』

 幼少期に性的虐待を受けたジェシカ・マルチネリ氏は25歳で警察官となり、そのわずか1年後に自ら加害者を逮捕した。彼女は9歳から約2年半にわたり虐待を受けて15歳で告発したものの、当時の警察の対応が極めて不十分で多くの障害に直面した。そんな自身の壮絶な経験を綴った書籍を先ごろ出版し、同じ被害により不信感や罪悪感に苦しんでいる人々が逆境を乗り越える勇気を持てるようメッセージを発信し続けていると4日付G1(1)が報じた。
 南部サンタカタリーナ州シャペコの市警捜査官のジェシカ氏は、33歳になった2024年末に自身の経験を記した書籍『A Calha(側溝)』を出版した。
 彼女は「この話を伝えることで、被害者が声を上げる勇気を持てるようになると考えた。私の行動が多くの被害者にとって参考になることもある。時効で加害者を逮捕できない人もいるが、私の経験が被害者の救いになれば」と語る。
 書籍の中でジェシカ氏は、9歳から11歳半まで、当時33歳だった加害者から虐待を受け続けたと明かしている。加害者は、家族と親しい間柄だった。彼女は多くの被害者と同様に、家族に話せる環境がなかったというが、「誰かに不満をぶちまける必要があった。だから、学校の友人や近所の人には相談していた」という。
 ある日、友人の一人が母親に相談し、その母親がジェシカ氏と話す機会を持った。これがきっかけとなり、彼女は信頼できる姉に打ち明けることができた。15歳の時、ジェシカ氏は姉と共に警察署へ行き、勇気を持って事件を告発した。だが警察の対応は冷たく、何度も同じ証言を繰り返さねばならなかったという。
 そんな経験がきっかけではあったが、彼女が警察官を志したのは、加害者を逮捕して復讐するためだけではなく、「私が動かなければ何も変わらないと思った」と強調した。
 2016年12月22日、加害者は逮捕された。ジェシカ氏は捜査チームの一員としてその場に立ち会った。「現場に向かう途中、警察官として加害者を逮捕するという決意とともに、11歳の頃の記憶が蘇り、震えや不安、恐怖に襲われた」と明かした。
 「加害者の取り調べは同僚が行ったが、最後に牢の扉を閉めたのは私だった。10年にわたる苦しみの終止符だった。こんな経験は誰にもしてほしくない」とした。
 加害者は旧法のもとで裁かれたため、すでに釈放されているといい、「当時の法律では『風俗に関する犯罪』とされていたが、現在なら『性的尊厳に関する犯罪』として扱われる」と付け加えた。
 ジェシカ氏は同様の被害を受けた人々に対し、「自分を責めないでほしい。私が水着を着ていたから、女の子だったから、子どもだったから悪いのだ―と私も当時は考えていたが、それは全く違う。まず信頼できる誰かに話してほしい。『言わないでいれば、いつか忘れられる』という考えは間違っている。いずれ心が押しつぶされる時が来る。だから勇気を持って告発して。加害者が逮捕されることで被害者の心の回復につながると信じている」とエールを送った。

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