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【既報関連】経営難に陥っているサンタクルス日本病院(二宮正人理事長)が1月から100人以上を解雇し、その退職金や給与が一部未払いになっていることで元従業員が組合やメディアに働きかけ、ブラジル社会に波紋が広がっている。それに関して、本紙から5日に病院に送った質問への回答が届いたので、ここに紹介する。
病院広報による「声明文」は次の通り。《サンタクルス日本病院は運営の見直しを進めており、その一環として人員調整も実施しております。これらの調整は、財政の持続可能性を維持し、可能な限り多くの従業員の雇用を守ることを目的としており、また、当院を利用される患者の安全を確保することを最優先に考えております。
医療業界全体、特に慈善病院は、COVID―19のパンデミック中、およびその後にかけて大きな影響を受けており、サンタクルス日本病院も同様に深刻な影響を受けました。そのため、病院の存続と再建を可能にするために、必要な調整を実施しております。この回復が実現すれば、新たな雇用の創出にもつながると考えております。
今回の人員調整は従業員全体の約15%に相当しますが、大量解雇には該当しません》
以下、本紙からの質問への広報からの回答を一問一答で紹介する。
(1)1月から2月の間に解雇された人は何人くらいいますか? 100人以上ですか? それは全従業員の15%に相当しますか?
【病院】広報を通じて病院が発表した声明文をご参照ください。
(2)大量解雇の理由は「パンデミックによる病院の財政状況の悪化」ですか? 具体的にどのような理由で財政状況が悪化したのか、分かりやすく説明していただけますか?
【病院】まず、大量解雇は行われておらず、700人以上の従業員が病院で働き続けており、さらに1千人以上の職員が外部委託契約のもとで勤務しています。病院の深刻な財政状況の原因は、現在の経営陣の施策ではなく、過去に蓄積された多額の負債やパンデミックの影響、そして当時の経営陣の不適切な判断によるものです。前経営陣は、必要な調整措置を講じることなく、採算の取れない投資を決定し、結果として病院の状況を悪化させた上で、集団辞職しました。以来、現在の経営陣は病院の運営維持と債務履行のために尽力しており、その一環として固定費の調整も行っています。
(3)解雇の前に、従業員と話し合いの場を持つことはありましたか?
【病院】病院内のほぼすべての部門で、現状の厳しさや取られる措置について説明するために、複数回の会議が行われました。また、財政危機を回避するための交渉も実施されました。
(4)解雇によって病院の医療サービスに影響はありますか?
【病院】患者の安全を最優先に考え、調整を実施しました。
(5)病院の財政再建について、何か計画や見通しはありますか? もしあれば教えてください。
【病院】病院の財政回復を目指し、さまざまな交渉を継続して行っています。その中には、資金提供を受けるための提携の可能性も含まれています。
(6)解雇された元従業員の中には、「この病院の対応は、長年にわたり信頼を築いてきた日系社会への裏切りだ」と主張する人もいます。この意見についてコメントがあれば教えてください。
【病院】前述の通り、病院に悪影響を与えたのは過去の経営陣の対応であり、現在の経営陣は病院の再建と日系社会の中で存続させることを目指して努力しています。多くの困難を抱える中で、最大の目標は病院の回復であり、そのためにもできる限り多くの雇用を維持することを目指しています。今回の調整は、病院の存続を最優先に考えた結果であり、法的代表者たちは個人資産の差し押さえリスクも負っています。さらに、日系社会の代表者には何度も支援を求めており、Enkyo(援協)からの支援を受けたほか、日系病院同士の統合提案もありましたが、日系社会側の事情により進展しませんでした。
(7)2022年6月にJICAの支援を受けた「がんセンター(COSC)」開所式が行われましたが、センターの設備を使用した患者の受け入れが始まっていないという話を聞きました。これは事実ですか?
【病院】がんセンターはすでに全面稼働しており、JICAの補助金で購入された高額設備も2023年から稼働しています。