第1話-楽しいフェスタ
“マイゾウ・メーノス”の世界で一番顕著なのが、約束した時間に遅れて行くのが通常で、逆に日本式にピッタリの時間に行ったら、失礼にあたってしまうことである。例えば、誕生日、結婚の祝い、食事の招待を受けた時は、早くて30分の遅れ、通常1時間位遅れて行くのが常識である。時間通りに行ったら、準備が出来ていないのに訪問者を応対することになり、招待した方に迷惑をかけることになってしまう。
ブラジルに来てすぐの時、食事の招待を受け時間にピッタリに訪問したら、なにも準備が出来ていないところに着き、ただ飲み物だけを出され、1時間もの間、ほかの訪問者が来るのを待ったことがある、その時はなんとも言えない気まずさに、その辺に置いてあった雑誌を、わけもわからずめくりまくって、だまって時間の過ぎるのを待ったことがある。
招待する方も、どうせ皆遅れて来るのだから、時間は少し早めに決めておけば良いし、準備も少し遅れる位で良い、といいかげんな無言の取り決めが存在しているように思える。
これは仕事の面でも同じで、約束の時間に5分から15分位遅れるのがちょうど良い、訪問を受ける方は少し遅れるのを見込んで、何か仕事をしており、時間ピッタリに訪問を受けるのを嫌う。日本式に玄関前で待ち、時間ピッタリに訪問したら「ヘイ・ジャポネース、オラーリオ・ブリターニコ!(この日本人、英国式時間帯だ!)」と言われてしまう。
特にひどいのは、政府関係者を招待して行う式典である、招待を受けた仲間同士で約束が出来ているのかどうか、うまい具合に、一番偉い人が最後に一番遅れて来る。それまで皆ワイワイ、ガヤガヤ立ち話をして時間を潰すのである。「この忙しい時に」とか、「次の予定があるのに」と気をもんではいけない。“郷に入っては郷に従え”である、ゆったりと構えていなければならない。日本流に“時は金なり”との諺はあり、“テンポ・エ・ジネイロ”と言われるが、本当にどこまで理解している人がいるのかわかったものではない。