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「日本でブラジル人コミュニティのある町と言えば、群馬県大泉町や静岡県浜松市、愛知県内などが有名ですが、最近、湖南市やその周辺で働きたいと希望する外国人ワーカーが増えています」と話すのは、湖南市を拠点に人材派遣サービスや業務請負を手がけるインフィニティ株式会社の上森秀夫代表取締役(42歳、サンパウロ市出身)だ。現在、滋賀県湖南市は、総人口に占める外国人の割合が県内トップの7・2%を記録している。訪日就労者に人気上昇中の湖南市の様子を、上森氏に聞いてみた(取材=大浦智子さん)。
湖南市の総人口は5万4048人(2024年12月5日現在)、そのうち外国人は3991人(2024年11月30日現在)を占めており、国籍別では上位3カ国の1位がブラジル(1502人)、2位がベトナム(975人)、3位がペルー(351人)だ。
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この町で外国人労働者が増加する背景には、ボランティアや思いやりのある公立学校教師による幼少期からの日本語教育が継続されていることがあるという。地域社会と外国人コミュニティの相互理解を深めるため、ブラジルを代表するトップミュージシャンを招いたイベントが実施されるなど、湖南市独自の取り組みが注目を集めてきた。仕事の機会だけでなく暮らしやすさが評価され、滋賀県が選ばれるようになっているのだ。
自社でも国際交流イベントを主催してきた上森氏は、「小粒でもピリッとしたニュースが知られるようになったことが大きい」と満面の笑みを浮かべる。2人の娘も同市立水戸小学校内の日本語初期指導教室「さくら教室」でお世話になったことに繰り返し感謝する。「さくら教室」は、日本語や日本の文化・習慣などを集中的に学ぶ機会を設けることで、湖南市の小中学校へのスムーズな転入を支援する制度である。
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「元気印」の社長とホットな中南米コミュニティ
これまで在日ブラジル人が集住する地域として知られてきた日本屈指のエリアと比べると、湖南市とその周辺地域の中南米コミュニティは知名度が低い。しかし、同地域ではアットホームな雰囲気の中、日本人と外国人が穏やかに暮らしている。その状況が徐々に知られるようになってから、他県からも新たな多文化共生のモデルを求めて現地視察に訪れるようにもなっている。
同地でブラジルや南米出身の人々にとっては懐かしい場所、日本の人たちにとっては海外に行ったような気分が味わえるコミュニティを、17年以上かけて築いてきた中心人物の一人が、「元気印」という言葉がぴったりの上森氏だ。
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「湖南市に新たな情報発信拠点を広げると同時に、インフィニティ・グループ(INFINITY GROUP)の事業の発展を通じて、外国から来られる方々が、湖南市の魅力に触れ合う機会や環境づくりへの貢献を今後も目指していきます」と、南米由来のポジティブ思考が地域に一灯を燈している。(つづく)