
「ビルのあんな高い場所にどうやってペインティングするのか」と不思議な落書きが町のあちこちで見られる。落書き者(グラフィティアーティスト)は自分たちの勇敢さを誇示するつもりで、地上20階もの高さの壁面を窓枠などの僅かなでっぱりを頼りに、命綱もなく手だけで移動してスプレーで証拠としての落書きを残す。だが中には、その途中で怖くなって降りられなくなり、警察に救助されるケースも。
9日(日)、サンパウロ市中心部の歴史地区にある建物に、スプレーで落書きした8人の男性グループが逮捕された。彼らは早朝にはしごを使って建物の裏側に入り、そこから外壁を手だけで登りながら12階から20階まで落書きした。だがその後に降りられなくなり、警察に救助されるまで8時間以上、建物にぶら下がったままになったと、同日付メトロポレスなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
ブラジルでは建物や壁、記念碑などの公共の場所に、特徴的な筆記体で書かれた文字やシンボルを描く落書きのことを「ピシャソン(pichaçãoまたはpixação)」と呼ぶ。サンパウロ市をはじめとするブラジル全土の大都市で、貧困層や若者の文化的表現手段として用いられ、社会的、政治的なメッセージや個人のアイデンティティの主張が込められていることが多い。
だが、ピシャソンはギャングと関連づけられることが多く、さらに2011年に定められた法律第12408号の第65条に基づき、器物損壊罪および環境犯罪と見なされ、3カ月〜1年の拘禁刑と罰金を科すことが定められている。
今回の事件は、7月9日大通りのブラジラール・ビルで発生した。1940年代に建設されたこのビルは、アールデコ様式の特徴を持つモダン建築で、サンパウロ市によって歴史的建造物に指定されている。現在は住居兼ホテルとして使用されている。
ビルの管理人によると、フード付きの黒装束の容疑者ら8人は、午前5時にビルに到着し、はしごを使って裏手の庭に入り、外壁を登って9階分にわたってピシャソンを行った。その後、彼らはあまりの高さと場所の不安定さとで怖くなり、自分たちだけでは降りられなくなった。その状況に気づいたビルの管理人が、午前10時頃に警察に通報した。
当初、救助活動は難航したが、結局は建物内部から窓を開けて助け出し、午後1時頃過ぎにようやく全員の身柄を拘束した。それまで彼らは約8時間にわたってビルにぶら下がった状態だったが、けが人はいなかったという。
州保安局(SSPーSP)によると、スプレー缶が押収され、専門家による現場鑑識が行われた。