サンパウロの気候についてもう少し述べると、一日の内に夏から冬までの四季があることである。朝、今日は暖かくなるなと思い、軽い洋服で出ると、日中は確かに暑くてちょうど良い具合だが、夕方から小雨とともに急に冷え込み、寒くなってガタガタ震えるくらいになってしまい、一寸油断するとすぐに風邪を引いてしまう。
この様に一日に夏と冬があるため、雨傘は離せないし、5月から11月位の間はちょっとした冬着が手離せない。学生、若者を良く見るとわかるが、常に腰にカーデガンとか長袖の服を巻いて歩いている、これは流行のスタイルではなく、暑ければ腰に巻き、寒くなってきたら着るという、自然に出来た、夏冬防衛方法なのである。
サンパウロと違って、マナウスは乾季、雨季はあっても、一年中夏である。最低気温は18度、通常の気温は雨季の涼しい時で22~25度くらい、乾季の暑いときは40度を超えることもある。
こんな気候であるから、アマゾネンセ(アマゾン生まれの人)は、住宅も衣類も一年中同じ物で良い。生まれた時から、この様な環境で生活していると、「そろそろ寒くなる季節だから、冬着を出して、暖房機も準備しよう」、「さて冬も過ぎたし、暖かくなるから、冬着をしまって、暖房機も掃除してしまっておこう」と先を見て行動をする生活習慣がない。そのため、なにをするにも、その場当りの行動が多く、すごくのんきで、明日のことなど考えない生活習慣が身に付いてしまっている。
1980年後半の超インフレで、明日買う食糧の値段もわからない緊迫した時や、1990年前半の大量解雇の時期で街角に失業者が溢れた時でも、街の中のいたる所で、道端にテーブルを並べ、そのテーブルの上には、コップを置く隙間を除いては、ビール瓶が一杯並んでいる光景を見た。「この不景気な時に、毎日、こんなにもビールが良く飲めるものだ」と感心したものである。たしかにアマゾンなら、金がなくなっても、川で魚を取って、山でバナナを取り、キャッサバ芋の粉で作ったファリーニャ(マンジョカというキャッサバ芋の粉を鉄板で熱をかけ焙った粉)があれば食べ物には困らないし、着物はショートパンツ一枚あれば良い、裸で寝むれるのだから、たしかに「なんで、明日のことなど心配して生活しなければならないのか」ということになる。
私もマナウスに来てはじめの頃は、どんなに暑くても下着を着ていないとなんか気持ちが悪く、腹の具合を悪くしてしまいそうで下着シャツなしではいれなかった、また外に出る時は半ズボンで出る習慣が身につかず長ズボンでないと外出できなかった。30年過ぎた今では逆に肌に汗がまとわり付くのが気持ち悪く夜になっても、上は裸、下はショートパンツでないといれなくなった。外出の時もショートパンツにスリッパで出かけるほどにマナウスライズしてしまった。