ミレイ大統領に弾劾請求か=暗号通貨詐欺に加担した疑いで

ハビエル・ミレイアルゼンチン大統領(Foto:Fórum Econômico Mundial/Ciaran McCrickard)
ハビエル・ミレイアルゼンチン大統領(Foto:Fórum Econômico Mundial/Ciaran McCrickard)

 新暗号通貨「$LIBRA」は、ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領がSNSで推薦したことで価値が急騰した。だがその直後に急落して数千人の投資家に損失をもたらす結果に。ミレイ氏は数時間後にそのSNSの投稿を削除し、通貨プロジェクトの詳細を把握していなかったと口を濁した。
 $LIBRAは実際の通貨価値を持たないデジタル価値単位だ。現在、同氏は捜査対象となっており、野党は詐欺行為が行われたとして弾劾を求めている。$LIBRA創設者は、このプロジェクトがアルゼンチン政府と共同で計画されたと主張しているが、アルゼンチン政府は関与を否定していると18日付G1など(1)(2)が報じた。
 ミレイ大統領は14日夜Xに、この暗号通貨が「アルゼンチン経済の成長を促進し、小規模企業や事業の資金調達を行うことを目的とした民間プロジェクト」であると投稿した。さらに「世界はアルゼンチンに投資したいと考えている」と述べ、暗号通貨の名前とそのページのリンクを貼り付けた。
 この投稿が公開されると暗号通貨の価格は急上昇し、その価格は一時4978米ドルに達した。だがすぐに暗号通貨市場の専門家らは、この暗号通貨が投資家にとって「危険なもの」である可能性を警告した。その大部分が少数の人々の手に握られていたため、価格が不安定で、投資家にとって損失を招く可能性が高かったからだ。
 ミレイ氏の投稿後、$LIBRAの初期保有者は価格が急騰したタイミングでその資産を売却し、利益を確定した。この行為は「ラグプル」と呼ばれ、暗号通貨の開発者たちが意図的に投資を引き寄せ、価値を人工的に急上昇させたところで売り抜けるもの。
 その結果、売却によって価格が急落し、後から入った投資家に大損失を与える詐欺行為となった。今回の場合、ミレイ氏の投稿は、$LIBRAへの投資流入を膨らませ、その価格を上昇させるために加担した形になったと考えられている。
 ミレイ氏は、事件後数時間以内に再びXに投稿し、$LIBRAへの支持を撤回したが、弁明が不十分であったため多くの疑念が寄せられた。野党は同氏に対する弾劾を求め、詐欺行為に関与したとして法的措置を取る方針だと示している。
 連邦裁判官のマリア・ロミルダ・セルビニ氏がこの事件を担当しており、ミレイ氏に対する詐欺罪と公共倫理法違反の複数の訴訟を取りまとめている。
 一方、アルゼンチン政府はこの通貨プロジェクトへの関与を否定し、政府内部の調査機関を設立して捜査を行う方針を発表した。それに加えて、ミレイ氏は米国連邦捜査局(FBI)による調査を受ける可能性もある。ラ・ナシオン紙が入手した文書によると、少なくとも1件の告発がFBIに対して提出されているという。
 他方、$LIBRA創設者ヘイデン・マーク・デイヴィス氏は、プロジェクトの失敗を自らの責任とし、巨額の資金を投じることでプロジェクト再生を試みる意向を示した。だが、彼はミレイ氏が支援を撤回したことがプロジェクトの信頼性を損ねたとして、その責任も追及している。デイヴィス氏はミレイ氏との連携についても初期段階から意見交換をしていたことを明かし、当初の計画に従って実施されたことを強調した。
 この事件はアルゼンチン内外でのミレイ氏の信頼を著しく損ない、政治的にも大きな波紋を呼んでいる。

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