
【既報関連】ミャンマーで人身売買の被害に遭い、3カ月以上も強制労働を強いられていたブラジル人男性、ルッカス・ヴィアーナ・ドス・サントスさん(31歳)とフェリッペ・デ・モウラ・フェレイラさん(26歳)。二人は保護されていたタイのバンコクを18日に出国し、翌19日午後にサンパウロ州グアルーリョス国際空港に到着した。(1)奴隷のような過酷な生活について語ったフェリッペさんのインタビューが18日付G1(2)で報じられた。
二人ともサンパウロ州出身で昨年10月、別々にネット求人情報に釣られてタイに渡り、中国系マフィアに監禁され、ミャンマーに連行された。その挙句に「KK園区」でネットを介した特殊詐欺行為に加担させられていた。国際非政府団体(NGO)の介入を受けて11日に解放され、在タイ・ブラジル大使館の支援を受けて保護されていた。
KK園区は人身売買、臓器売買、特殊詐欺の終着点、入ったら二度と出られない場所であると報じられている。人口は8千人程度と言われ、園区内にはスーパー、病院、レストラン、ホテル、売春場などの施設もあり、独自の臓器売買産業チェーンを持つ。同園区のスタッフは、誘拐被害者にまず無料で薬物を提供し、強制的に服用させて中毒にさせる。被害者は薬物中毒になった後、高額な薬物代を払えなくなり、詐欺集団に従い続けることになると言われる。(3)
フェリッペさんによると、他の外国人と共に特殊詐欺に加担することを強制された。彼らには決まった脚本があり、最初は詐欺のターゲットに個人情報を尋ね、4日目にはオンライン販売サイト「Wish」で働いていると偽り、金銭的な援助を要求。援助をしたら30ドルの報酬が与えられると説明し、その金額が増えていき、最終的には5千ドルに達するまで何度も金銭を引き出すよう仕向けていたという。
フェリッペさんは特にブラジル人に対する詐欺を強制されたが、次第にロシアやウクライナ、米国など他の国々の人々にも同様の手法で詐欺を行うことになった。
詐欺グループのリーダーは全員中国人で作業は10分おきに監視され、1日平均16時間の長時間労働を強いられ、時には22時間働くこともあった。ノルマが達成できないと、電気ショックや暴行の体罰を受けることは日常茶飯事で、スクワットは100〜500回を強制され、歩けなくなるほどの苦痛を味わったという。
フェリッペさんは、脱走を試みた別の国籍の男性が捕まり20日間にわたって暴行を受け、電気ショックを浴び、鉄のベッドに足を縛りつけられているのを目撃し、自分もいつか命を落とすのではという恐怖におびえ続けていた。
それでも二人は他の被害者と共に複数回にわたって脱走を試みたが、警備が厳重で失敗に終わった。最初の試みは1月1日、次は中国新年の1月28日だったが、最終的に2月8日に多数が一緒に逃亡を決行。刃物を持った警備員に追われたが逃走を続け、約3日後、反政府武装組織「民主カレン慈善軍(DKBA)」に見つかって拘束された。その後、彼らは人身売買対策を行うNGO団体「ザ・エクソダス・ロード」の介入で解放され、タイに送られた。
現在、フェリッペさんは帰国して過去の経験を忘れ、心のケアを受けることを望んでいる。過酷な環境で目撃した暴力や拷問は深い心の傷となり、特にルッカスさんが虐待を受けるのを見たことが大きなトラウマになっているという。