機内食調理の舞台裏のぞく=膨大な準備と厳格な管理

機内食は厳格な管理プロセス経て乗客に提供される(Foto:Divulgação/Gategourmet)
機内食は厳格な管理プロセス経て乗客に提供される(Foto:Divulgação/Gategourmet)

 「ビーフ・オア・チキン?」――長距離便の機内食は、旅のひとときを彩る重要な要素。その定番の質問が飛び交う前に、どれほど多くの工程と工夫が隠されているのか。機内食が調理され、乗客のもとに届くまでには、数々の段階と厳格な管理が存在する。この舞台裏について年末12月19日付CNN(1)が詳細に報じている。
 南米最大のハブ空港・サンパウロ州グアルーリョス国際空港を拠点に、17の航空会社に機内食を提供する「ゲート・グルメ(gategourmet)」社は、空港からおよそ5キロ離れた施設で、毎日1万7500食以上の機内食を調理。この食事は1千台以上のミールカートに詰められ、航空機に届けられる。
 この施設は1万7千平米の広さを誇り、冷蔵庫、調理場、パン屋、製菓室、洗濯室、清掃・組み立てエリアを完備。毎日700種類以上のレシピが作られ、長距離便向けに30便分の食事が準備される。
 機内食のメニューは航空会社の予算で決定され、調達される食材は空港の立地によって影響を受けるという。同社ブラジル支社のエグゼクティブシェフ、ギリェルメ・シュルゼ氏は、常に変化を追求し、多様性に富んだレシピ開発を行っていると語る。
 同氏はベジタリアン向け料理にも工夫を凝らし、「例えば、最近パルミット(ヤシの新芽)のムケッカ(バイア州の伝統的な煮込み料理)を試作。このレシピはベジタリアンにもヴィーガンにも対応可能で、今後メニューに導入予定」と語った。
 施設は24時間体制で運営され、スタッフは800人以上。手作業が重視され、最新のシステムがリアルタイムでフライト数、乗客数、クラスの内訳を更新している。航空会社ごとの食事提供を実現するため、ハラール(イスラム法に則った食事)と非ハラールの製造ラインが分けられ、中東の航空会社向けの食事にはムスリムの規定に従った基準が設けられている。ハラール食品を扱うスタッフは他の食品を一切扱わず、道具も分けられ、厳格な管理が行われている。
 食材が届くと、まず受け入れ検査が行われ、次に乾燥エリアや冷蔵庫で適切に保管される。汚染を避けるため、紙箱やガラス、缶は厨房エリアには持ち込まれず、食材はプラスチック容器に移し替えられて運ばれる。前処理として毎日1800kgもの野菜や果物が洗浄され、切り分けられた後、冷蔵庫で保管される。これらは48時間以内に使用されることが義務付けられている。
 厨房には巨大なフライパンや鍋が並び、1日平均900個のオムレツ、250kgのマッシュポテト、400リットルのソースなどが作られる。調理された食材は冷却され、翌日提供される。ベーカリー部門では55種類のパンが1日あたり約7万個製造され、当日中に提供される。製菓部門では75種類のデザートが毎日8600個作られている。
 食事が航空機に積み込まれると専用オーブンで温められ、客室乗務員により調理時間や盛り付けの指示が出される。機内では気圧や乾燥した空気が味覚に影響を与えるため、食事には少し強めの味付けが施されることが多い。揺れる機内でも扱いやすい食器や液体(汁気)の少ない料理、ナイフを使わずに食べられる料理が選ばれる。
 提供前に一度冷蔵庫で保管されるため、カリカリした食感の料理は避けられる。20種類以上の食事制限に対応しており、特別食は乗客が航空会社に事前にリクエストする必要がある。
 全ての作業が完了した後、食事はミールカートに積み込まれ、厳重に封印後、積み下ろしエリアに運ばれる。空港に到着した飛行機は、使用されたカートを返却し、全てのゴミは廃棄エリアに運ばれる。未開封の飲料を除き、いったんミールカートに積み込まれた食べ物は、全て廃棄される。
 食品の残りやパッケージ類、プラスチックは焼却処分され、閉じられたトレイが未開封で戻ってきた場合でも、航空規則により廃棄される。たとえ便がキャンセルされた場合でも、食事は廃棄しなければならない。衛生規定は非常に厳格で、一度工場を出た食品は再利用されることはないという。

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