ドイツ在住ブラジル人らの不安強まる=極右台頭と移民排斥の波で

ドイツで移民強制送還の実施を求めるデモ参加者(24日付BBCブラジルの記事の一部)
ドイツで移民強制送還の実施を求めるデモ参加者(24日付BBCブラジルの記事の一部)

 23日に投開票されたドイツ総選挙で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が20・6%の得票率で第2位に躍進し、28・6%で首位となった保守連合の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」に次いだ。選挙戦の中でAfD党首アリス・ワイデル氏は、移民と子孫の大規模帰国を推進する「再移住」計画を支持。AfD政治家がネオナチと会合し、数百万の移民や難民の強制退去について議論していたことが報じられ、全国的な抗議を招く一方、この反移民の強硬姿勢が国民の支持を集める結果となった。ドイツ在住ブラジル人の不安は深まっていると24日付BBCブラジル(1)が報じた。
 ライプツィヒ在住のガブリエラ・バダインさん(27歳)は極右台頭に無力感を感じているという。ドイツ語専攻大学院生の彼女が住むザクセン州は、AfD支持が急増しており、昨年9月以降、同党は地元議会でCDUに次ぐ第2の勢力となり、わずか1議席差でその後ろに迫っている。
 ガブリエラさんは「私は白人だから見た目で外国人だと気づかれることは少ないが、レバノン出身の彼氏と一緒にいる時には何度も差別的な出来事に遭遇してきた」と語り、具体的にはドイツ人の若者が近づいてきて、ナチス式の敬礼を模倣した動作をしたという。2024年のデータによると、ドイツ国民の13・3%が外国人に対して脅威を感じていると回答している。
 AfDはそのネオナチ的な思想が問題視されており、党のメンバーがナチス親衛隊を擁護したことが報じられ、欧州議会の極右連合から追放された。AfDは移民や「非同化市民」を強制退去させる過激な政策を掲げて、その姿勢が支持を集めている。
 こうした出来事により、CDUやオラフ・ショルツ首相率いる社会民主党(SPD)を含む他の政党は、AfDと一切協力しないことを約束し、極右勢力を隔離するための「政治的防壁」を形成した。だがCDU党首フリードリヒ・メルツ氏が今年1月、家族呼び寄せ制限や移民拒絶を求める法案を提出し、その議論にAfDの支持を得てしまったことは国内で議論を呼んだ。この法案は成立しなかったが、メルツ氏は今後この措置を実施することを優先事項に掲げており、多くの移民たちを不安にさせている。
 ガブリエラさんは不安定な状況下で自分の将来を懸念し、ドイツに住む他の外国人らとともに最悪の場合は他国に移住することも考えていると話す。移民の子供たちにドイツ語を教えるアルバイトをしており、増加する排外主義が自分の職にどのような影響を与えるか、また他の職を探す際に困難に直面するのかなども心配しているという。
 一方でルシアノ・ルスさん(38歳)は移民としての差別を経験した1人だ。マンハイムで食品配達員として働く彼は、過去に自転車で道を走っていた際、車から水の入ったコップを投げられる嫌がらせを受けたことがある。「ほぼ100%の配達員は移民だ。移民排斥の波が押し寄せてきて、この時初めて恐怖を感じた」と語った。
 でも、ルシアノさんは感情を抑え込み、過度な恐れや怒りを抱えないようにしている。「AfDに投票する人々は、以前から移民やLGBTに反感を抱いていたが、それを公にするようになっただけだ。彼らがその考えを変えることはないだろう」と述べ、「極右はどこでも増えている。ドイツ、米国、ブラジルでも」と冷静に語った。
 ソフトウェア分野のコンサルタントとして2018年にドイツのブルッフザールに移住したエデル・ソウザさん(40歳)は「移民や外国にルーツを持つドイツ国民がAfDを支持するのは理解できない」と語り、極右が支持を得る背景にポピュリズムがあると指摘している。特に南アフリカ出身の実業家イーロン・マスク氏のような影響力を持つ人物がAfDを支持したことで、極右勢力の社会的認知度や支持基盤を強化する恐れがあることを懸念している。

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