
7月6〜7日にリオ市で開催されるBRICS首脳会議に先立ち、同シェルパ会議の第1回会合が25〜26日に行われ、11カ国(未加盟のサウジアラビアを含む)の外交代表が首都ブラジリアに一堂に会した。トランプ米大統領の脅威にもかかわらず、BRICSは域内取引において現地通貨を使用するシステム創設に向けた取り組みを継続し、脱ドル化を推進する決意を示したと26日付のUOLなど(1)(2)(3)が報じた。
マウロ・ヴィエイラ外相は演説で、BRICS議長国のブラジルにとって、通貨問題が優先事項であることを強調。「BRICS諸国が世界経済に大きく貢献しているにもかかわらず、域内貿易はその潜在能力に比べて非常に低い。議長国であるブラジルは、貿易の流れを増加させる方法、貿易円滑化措置の検討、自国通貨による決済手段の促進に焦点を当てる」と述べ、域内での新たな通貨利用システムの構築を目指す方針を再確認し、それが経済的協力の強化を図るための重要な施策だと指摘した。
トランプ氏は、BRICSがドルの使用を減らす方針を採れば150%の関税を課すと警告していたが、BRICS側はドル依存脱却を加速させる意向を固持している。ブラジルのマウリシオ・リリオ大使は、「現時点ではBRICS通貨の創設に関する議論は行われていない」としつつも、将来的にその可能性について議論が行われる可能性があると述べた。BRICS諸国が共通の経済目標に向けて努力していることを強調し、現地通貨を利用した決済システムの導入が経済的協力の深化に寄与するとの見解を示した。
ロシアとイランが推進している「BRICS通貨」構想は、昨年カザンのBRICS首脳会議で議論され、プーチン大統領はBRICS共通通貨を模した紙幣を披露し、意欲を示した。だがブラジル政府は現時点では新通貨創設の議論は避け、現存通貨を用いた取引促進に注力している。
ブラジルは域内での貿易低迷を打破するため、「BRICS Pay」代替決済システムの導入を推進しており、これにより国際貿易におけるドル依存を減らし、より効率的で公平な取引を実現することを目指している。トランプ氏がこれに対して課税を強化する可能性がある中で、その導入に向けた議論は今後も継続されると見込まれている。
BRICSの外交関係者たちは、この新決済システムが、経済的自由を促進し、BRICS諸国間での貿易を活発化させるための重要な手段となると確信している。リリオ外交官は「BRICS諸国は経済的協力を深めるために、商業的、金融的な障壁を取り除く方法を模索している」と域内貿易拡大に向けた意欲を示した。
一方でブラジル政府は、この通貨問題をトランプ大統領とのイデオロギー的な対立に発展させないことを目的としており、外交当局は「実務的かつ技術的で限られた視点」から議論を進める方針だ。ブラジル政府はこの議論の焦点を地政学的な問題から社会、経済、環境問題にシフトさせることに注力している。
他方、中国はBRICS略称の意義を改め、圧力をかけてくるアメリカに対抗する姿勢を見せた。新たに提案された「Bravery(勇気)、Responsibility(責任)、Inclusion(包摂)、Cooperation(協力)、Solidarity(連帯)」は、BRICSの価値観を象徴するものとして提示され、単なる経済的枠組みを超え、政治的・社会的結びつきも強化する意図を示すものであり、米国からの圧力に対する反発を込めたものだという。