
不法移民の強制送還など強硬な移民政策を推進してきたトランプ政権の下、米国在住のブラジル人は正規ビザを保有していても、恐怖と不安に包まれ日常的に緊張感を感じながら生活していると25日付UOL(1)が報じた。米国在住ブラジル人は、米国人の中に潜在する排外的感情が、トランプ政権下で露呈しているのを感じている。
マサチューセッツ州ボストン在住でベビーシッターのシンチア・ロドリゲスさん(23歳)は、トランプ大統領就任直前、電車内で外国人排斥的な攻撃を受けた。米国に住んで3年だが初めて受けた人種差別だった。
シンチアさんは、隣にいた40歳くらいの女性から国籍を尋ねられ、ブラジル人だと告げた後に侮辱的な発言をされた。「彼女は私に悪口を言い始めて『トランプが新大統領になるんだから、アンタは強制送還されるわね』って言ってきた。ブラジル人女性は米国に来て、米国人の雇用や男を奪っているとも言ってたわ。最後には私と同じ空間にいるのは耐えられないって言い放って去った」と振り返った。
彼女は当初ショックで何が起こったのか理解ができなかったという。移民・関税執行局(ICE)の取り締まりが強化され、移民が集まる場所では頻繁に巡回が行われているため、今は常に身分証明書を持ち歩くようにしているという。
ニューヨークに1年ほど暮らすSNS運営者アナ・ベアトリス・サントスさん(28歳)は、勤務先のニュージャージー州ニューアークでは街が静まり返り、パンデミック時のような雰囲気が漂っていると語る。同地はブラジル系住民が多い都市として知られ、人口約30万人のうち約5万人がブラジル人移民だ。
ベアトリスさんは「街の雰囲気はまるで葬式。以前はブラジル音楽を流しながら走る車や、バルでビールを飲むブラジル人をよく見かけたけど、今は通りに人影がなくなった」と話した。
彼女は「ニュースを見るのをやめたわ。不法移民が虐待を受けたという動画を見るたびに落ち込んでいたから。皆、祖国に戻ることを恐れているのではなく、尊厳を持って戻れるかを心配している」と語った。
彼女自身は直接的な攻撃を受けたことはないが、常に身分証明書を携帯している。正規ビザを持っているものの、非常に不確実な状況であり、最悪の場合、追放されることを恐れている。「私は、白人で典型的な愛国心の強い米国人と接する機会が多い。彼らの多くは移民に好意的に接するけど、どこか上から目線の態度を隠しきれていない。米国の生活が安心だとは思えない」とコメントした。
バーモント州ラトランドに留学するエリキ・ジュニオール・ペレイラさん(26歳)は、ICE巡回は見たことがなく、交通違反などに巻き込まれ、当局とトラブルになることを恐れている。「ここは民主党が多い州だが、私はどこへ行くにも常に身分証明書を携帯している。身分を証明できないと何されるか分からないからね」と話す。
彼は「米国では歓迎されていない」と感じ、トランプ氏が政権を握る4年間に良い展望を持っていない。トランプ氏を支持した人々の中には、経済的な理由で支持する者もいれば、排外的・差別的な弁論術に共鳴している者もいると見ている。
エリキさんは米国で学位を認定し、修士号を取得して新たな生活を築くつもりだったが、トランプ氏就任後に考えを改め、留学プログラムが終了次第、ブラジルに帰国する意思を固めた。一方、シンチアさんとベアトリスは米国に留まるつもりだというが、シンチアさんは米国に根を下ろすつもりはないと語る。ベアトリスさんは、米国人との間にもうけた幼い息子との絆があるため米国に残ることを決めたが、「アメリカン・ドリーム」はもはや現実のものではないと感じている。