メルコスル脱退を再び示唆=ミレイは米国貿易協定を優先

ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領(Foto: Sitio web oficial del gobierno argentino, via Wikimedia Commons)
ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領(Foto: Sitio web oficial del gobierno argentino, via Wikimedia Commons)

 アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は1日、アルゼンチン議会の開会式で行った演説の中で、再び南米南部共同市場(メルコスル)からの脱退の可能性に言及し、この経済圏はブラジルだけを豊かにしたと批判した。メルコスルからの脱退を通じて、米国との自由貿易協定の締結へ向けて前進する意向を示したと、2日付G1が(1)が報じた。
 ミレイ大統領は、「我々の第一歩は、米国との貿易協定締結という歴史的なチャンスを得ることだ。この機会を活かすために、より柔軟な対応が必要であり、場合によってはメルコスルから離脱することも辞さない。なぜならメルコスルは発足以来、アルゼンチン民の貧困を助長し、ブラジルの大企業家を富ませるだけの存在に過ぎなかったからだ」と述べた。
 ミレイ氏は1月にも、米国との自由貿易協定を結ぶためにメルコスル離脱の可能性があると発言していた。同氏は、政治的盟友トランプ氏の大統領就任式に出席した2日後、「我々は米国との自由貿易協定交渉の可能性について意欲的に取り組んでいる」と述べた。
 ミレイ氏は、この米国との協定を単独で交渉するつもりなのか、それともメルコスルのパートナーと共に交渉するつもりなのかについては明言しなかった。メルコスルでは、他の加盟国の同意なしに二国間交渉を行うことは禁じられており、22年にはウルグアイが中国との間で交渉を行い、メルコスルの他の加盟国から反発を招いた。
 ミレイ氏は「メルコスル内にとどまり、既存の枠組みを維持したまま、この目標を達成することは可能だと信じている」と述べ、米国との自由貿易締結に向けての障害とならないように、他の国々と協力していくことを確約した。アルゼンチンはメルコスルの支柱の一つであり、最終的に離脱となれば大きな経済的影響が生じる可能性がある。
 政治学者のマウリシオ・サントロ氏は、ブラジルとアルゼンチン間のパートナーシップが地域貿易にとって重要であると強調。24年の両国間貿易は270億ドルに達しており、ブラジルはアルゼンチンの最大の輸出先、アルゼンチンはブラジルの3番目の最大輸出先だ。メルコスルを離脱すると、この貿易には関税や障壁が生じ、製品の価格が上昇し、インフレがさらに悪化する可能性がある。
 サントロ氏は、メルコスルは単なる自由貿易協定にとどまらず、共通の輸入規則や欧州連合(EU)との共同交渉など、関税同盟としての役割を果たしているとし、アルゼンチン離脱はメルコスルの世界的な交渉力を弱め、外国投資引き込みに悪影響を与える可能性があると指摘した。(2)
 ミレイ氏は45分にわたる同演説の中で、同氏の政権運営におけるシンボル「チェーンソー」が、「時代の変化」を示していると述べ、米国の政府効率化省(DOGE)のトップ、イーロン・マスク氏がこのチェーンソー政策に触発され、米国政府の縮小を進めていることを指摘。
 また、アルゼンチンが「世界の最前線に立っている」と強調した。ただ、同氏が「野心的な経済政策」と呼ぶチェーンソー政策はインフレ抑制を促したものの、貧困増加も招いている。
 演説の中でミレイ氏は、アルゼンチンが国際通貨基金(IMF)との新たな協定を締結し、今年中に「為替管理を排除するための融資を受ける」ことに近づいていると発表。借金返済は「公共支出の削減による財政調整から来る」と説明した。

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