
ブラジルの外交政策は現在、大きな転換期を迎えている。ルーラ政権下(労働者党・PT)ではBRICSに強く肩入れし、中国、ロシア、イランなどとの関係を推進することで、米国との摩擦を引き起こし、最終的には国際的な孤立を招く可能性があるという意見を、政治アナリストのフラヴィオ・モルジェンステルン氏が5日付オエステ誌(1)に投稿した。
トランプ米大統領は2期目の就任直後、ブラジルに関する質問に対し、嘲笑気味に「ブラジルとは〝素晴らしい〟関係を築くだろう」と述べ、ブラジルは全てにおいて米国に依存しているが、米国はブラジルには少しも依存していないと発言。この発言は、ルーラ政権と米国との関係が冷え込んでいることを浮き彫りにした。
米国は依然としてブラジルの主要な商業パートナーでありながら、ルーラ大統領やマウロ・ヴィエイラ外相、セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問のいずれも、米国政府との接触ができていない。一方で、米国はボルソナロ前大統領の三男、エドゥアルド・ボルソナロ下議(自由党・PL)とは絶えず連絡を取り合っており、同氏は国際社会や米国当局に向け、ブラジルの権威主義的傾向に強い批判を加えている。
2009年以降、ブラジル最大の商業パートナーは米国ではなく中国に取って代わられたが、米国は依然として自由世界のリーダーとしてブラジルにとって重要な存在であり続けている。
一方、BRICSはかつて「注目の投資先国」を指していたが、現在ではその存在感が薄れ、ブラジルには地政学的な重荷となっている。特にBRICS加盟国にはロシア、中国、イランなどの独裁的な国家が含まれており、これらの国々との連携はブラジルの国際的な信頼を損なうリスクを内包している。
23年、ルーラ政権がイラン軍艦2隻をリオ市コパカバーナ沖に停泊させることを許可し、米国から強い反発があった。米国政府は、これらの軍艦が核兵器開発に関与している可能性があるとして、ブラジルが誤ったメッセージを発信したと警告した。
トランプ政権はBRICSの通貨統一案に対して警戒しており、これがドルの地位を脅かすものであるとし、100%の関税引き上げを示唆している。トランプ氏は、ブラジルが米国産品に高関税を課していることを非難し、ブラジルに対する批判を強めている。(2)
さらに米国は、ブラジルがテロリズムの資金源となりうることを懸念し、もしこれが事実となればブラジルは経済制裁や外交的孤立に直面する恐れがある。これにより、ブラジル政府、特に最高裁(STF)の対応が米国の注目を集め、その判断が米国に不利なものであればブラジルは国際的に厳しい立場に追い込まれる可能性がある。
経済面では、ブラジルは依然としてドル依存からの脱却を試みているが、ドル相場は高止まりしており、米国通貨に頼る姿勢は変わっていない。
この状況下で中国はブラジルのウラン資源を求め、このウランが核兵器の製造にも使用される可能性が指摘されている。
この協力関係は11月に南アフリカで開催されるG20サミットに向けて調整されており、もし成立すれば、ブラジルは中国の核開発に関与することになり、国際的な安全保障に重大な影響を及ぼす可能性がある。この協定締結にはブラジル議会の承認が必要であり、エドゥアルド氏が外交委員会の会長に就任すれば、重要な役割を果たすことになる。米国はこの動向を注視しており、ブラジル政府、特にSTFや検察庁の対応に対して鋭い関心を寄せている。