
沖縄県立図書館の一行4人が2月半ばから3月初旬までの約2週間にわたってブラジルに滞在し、サンパウロ州とパラナ州の各地で写真や日記、議事録等の資料及び史料収集を行った。収集した貴重な史料の一部は同図書館に持ち帰って永年保存し、デジタルデータ化して広く一般にも閲覧できるようにするという。
今回来伯したのは、同図書館資料・情報班の遠山享史班長(1週間のみの滞在)、同班主査の原裕昭氏、町田宗博琉球大学名誉教授、同図書館活動奉仕員の城間セルソ明秀氏の4人。
原主査によると、沖縄県立図書館では沖縄県と海外在住ウチナーンチュのつながり強化を目的に、①ルーツ調査②資料・史料収集③資料・史料の展示と講演会の3事業を実施。これまでにブラジルのほか、ハワイ、アルゼンチン、ペルーなど米州地域を中心に資料・史料収集を行い、沖縄に持ち帰って燻蒸処理した上で目録作成・資料登録し、温湿度管理されている書庫で永年保存しているそうだ。
今回の来伯で一行は、サンパウロ州マリリア、プレジデンテ・プルデンテ、パラナ州ロンドリーナの遠方地をはじめ、サンパウロ市、スザノ、サントアンドレ、サントスなどサンパウロ近郊地を精力的に訪問した。
特に2月26日に一行は、サント・アンドレ市在住でブラジル沖縄県人会の重鎮である山城勇さん(96)の自宅を訪問し、同氏が青年時代から書き続けてきた日記や写真のほか、サントアンドレ支部長などを歴任した儀間マリオさんが持参した父母の結婚証明書や写真、同支部会員だった故・稲福昌氏の日記などの一部が提供された。

さらに、一行は2月28日にサンパウロ市北部ビラ・コンスタンサ区在住で「サントス強制退去事件」に家族して巻き込まれた上原キヨシさん(91、2世)宅を訪問。ブラジル沖縄県人会の第3代会長を務め、第2次世界大戦後の母県沖縄に戦災救援運動として支援物資を送る手立てを行うなど貢献した父親の故・上原直勝氏が大切に保管していた史料や写真などを、家族の了承を得て持ち帰った。
上原直勝氏が金庫に入れて保存していた史料の中には1946年5月30日、スウェーデン公使館日本人権益部を通してブラジルに送付、6月3日に在留邦人に配布された当時の外務大臣・吉田茂氏(後の総理大臣)の「終戦」告示とそのポルトガル語翻訳文など、歴史的に貴重なものも多数あった。
直勝氏の末息子であるキヨシさんは「史料の内容は父親から何も知らされていなかった」という。
1980年代から何度もブラジルに足を運んでおり、今回オブザーバー的な立場で県立図書館一行のサポートを行った町田名誉教授は、次世代への移行により散逸しがちな貴重な資料・史料の収集の必要性を強調。「『沖縄の宝』と言える史料(資料)を沖縄県立図書館で永久保存してもらって、コンピューター管理により、共有・活用していくことが大切」と話していた。