『九年母』が『朝蔭』と交流停止=ブラジル側停止受け、苦渋の決断

俳誌『朝蔭』9月号

 昨年9月号をもって発行が止まっているコロニア伝統の俳誌『朝蔭』と、日本の俳誌『九年母』とは、2016年来、俳句による国際交流をしてきた。だが『朝蔭』が停止状態にあることを考慮し『九年母』が『朝蔭』との交流を停止していったん区切ることが決まり、『九年母』3月号にその旨が公表された。
 『朝蔭』の佐藤寿和主宰が病気で復刊の目途が立たない中、くろしお句会の林とみ代さんが『朝蔭』誌友の吉田しのぶさんや串間いつえさん、宮川信之さんらに相談した結果、「このままでは誌友にお知らせができない。新聞に掲載してお知らせ願いたい」とのことになり、編集部に連絡が入った。
 『九年母』3月号に掲載された誌上念腹忌の結果と報告には、同誌の池田雅かず氏の言葉として、《小杉主宰とも相談の上、大変残念ではございますが、本交流事業をいったん区切りとすることといたしました。二〇一六年より始まりました俳句交流ですが、今まで多くの皆さま方にご投句賜りましたこと厚く御礼申し上げます》と書かれている。
 さらに《昭和二年、佐藤念腹氏が神戸より移民船でブラジルへ発たれる直前、五十嵐播水を訪ねてよりの縁で繋がった絆。たとえ紆余曲折があろうとも、赤い糸は決して切れることはないでしょう。小杉主宰も同じ思いを持っておられます》と綴る。そして小杉伸一路主宰選の特選句の最後には「日伯の句縁は永久に念腹忌」(神戸 池田雅かず)が選ばれていた。
 俳誌『九年母』は1924(大正4)年に創刊号が発行された。その発行母体の「九年母会」は1915年に前身の盟友会として和歌山市郊外に発足し、その盟友会が刊行を始めた。初代選者は北村桑雨、2代目選者は山本梅史、3代目選者が主宰となった五十嵐播水で、この頃には全国に会員を擁する規模の俳句結社となっていた。
 播水は、佐藤念腹と同じく高濱虚子の愛弟子であり、九年母会はホトトギス系の俳句結社として「平明余情・客観写生・花鳥諷詠」の精神を脈々と継承して今日に至っている。2019年4月号を以て1100号に達している。

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