米国の受刑者を受入れ開始=エルサルバドルが1人2万ドルで

Cecotに収容される囚人の様子(ブケレ大統領公式X@nayibbukele)
Cecotに収容される囚人の様子(ブケレ大統領公式X@nayibbukele)

 中米エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は16日、米国を追放された238人のベネズエラ国籍の受刑者を、自国の巨大刑務所「テロリスト監禁センター(Cecot)」に収容した。ブケレ大統領は、米国から受刑者を受け入れることを財政的な機会と捉え、囚人1人当たり年間2万ドルの支払いを受ける契約を米国と締結したと同日付オ・グローボなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
 この動きは、米国の厳しい移民政策と密接に関連しており、トランプ米大統領が1798年に制定された戦時下の「敵性外国人法」を行使したことが背景にある。米連邦判事はその適用を否定し、強制送還の停止命令を出したが、トランプ政権はこの命令を無視して強行した。
 ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーとされる受刑者を乗せた3機の航空機は、同日早朝にエルサルバドルの空港に着陸した。ブケレ大統領は自身のSNSで、空港で軍人が囚人を飛行機から降ろし、鎖につながれた囚人たちをバスに乗せ、Cecotまで続くキャラバン隊の動画を公開した。
 刑務所に到着後、囚人たちはひざまずいて刑務官に名前を告げ、髪を剃られた。動画には彼らが白い短パン、Tシャツ、靴下という格好で独房に連れて行かれる様子も映っている。マルコ・ルビオ米国務長官も自身のSNSにこの作戦に関する画像を投稿した。
 ブケレ大統領はさらに、米国籍の受刑者受け入れにも意欲を示している。米国の刑務所過密化と運営負担を軽減するため、エルサルバドルの刑務所を利用する提案を行い、両国間で新たな協力関係を築こうとする動きが注目されている。だが、米国の司法界からは異議も唱えられており、特に米連邦判事は米国民を他国に送ることは違憲であるとの見解を示している。
 ブケレ大統領はエルサルバドルの巨大な刑務所を、財政的利益を得る手段として活用し、同国の監獄制度を維持・強化する方針を打ち出している。2023年には米大陸で最大規模、4万人収容可能なCecotを開設し、そこに多数の受刑者を収容している。この施設は、エルサルバドル政府が「高リスクの受刑者」を収容するために設計されたもので、極めて厳格な監視体制と過酷な環境で運営されていると報じられている。
 人権団体や国際社会は、ブケレ大統領が行う監禁措置に対して強い反発を示している。特に収容される受刑者たちは、過密な環境で不適切な取り扱いを受けることが多いとされ、国際的な非難を浴びている。ブケレ大統領は、米国から受け入れる受刑者の数を年300人に制限し、その受け入れ条件を厳格に設定することで、批判をかわす狙いを持っているとされる。

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