元妻が32億円の遺産横領=架空人物で巧妙に心理操作

モニケ・エリアス容疑者(右)とイタマール・セルパ・フェルナンデス氏(左)(19日付CNNブラジルの記事の一部)
モニケ・エリアス容疑者(右)とイタマール・セルパ・フェルナンデス氏(左)(19日付CNNブラジルの記事の一部)

 ヘアケア製品の製造・販売大手「エンベレーゼ社」の創業者、イタマール・セルパ・フェルナンデス氏(享年82歳)の巨額な資産が、元妻でインフルエンサーのモニケ・エリアス容疑者(43歳)によって巧妙に操られ、1億2200万レアル(32億円相当)が不正に横領された。モニケ容疑者は架空人物を作り上げ、共犯者と共に2012〜23年にかけて不正工作を主導。警察の捜査により、この事件が単なる金銭問題にとどまらず、心理操作や周囲との信頼関係の崩壊が絡む、極めて悪質な犯罪であることが明らかになり、社会的な関心を集めている。18日付G1(1)(2)(3)(4)などが報じた。
 モニケ容疑者は、イタマール氏と知り合った08年から彼の私生活に深く関与し、家族としての関係を築くことに努めた。モニケ容疑者は、別の男性との間にもうけた息子ジョアン・カルロス(21歳)を連れて12年から同居を始め、さらにその2年後にはイタマール氏との間に双子をもうけた。モニケ容疑者は時間をかけてイタマール氏を探り、心理的な弱点を巧妙に利用して次第に彼を操り始めた。
 捜査によると、モニケ容疑者は「ジェシカ・フェレール」と名乗る、彼女の友人で腹心という設定の架空の人物を作り上げ、イタマール氏と電子メールで連絡を取り合い、彼を心理的に操作していった。「ジェシカ」はイタマール氏に対し、「あなたの職場には完全に信頼できる人などいない」と警告を繰り返し、周囲の人々に対する不信感を煽り、特に彼の元妻や息子たち、親しい友人との関係を断絶させるように仕向けた。イタマール氏の精神的な孤立を深めるとともに、金銭的な決断を操るようになった。
 モニケ容疑者は息子ジョアン・カルロス容疑者とマテウス・パレイラス容疑者と共謀し、不正な資産移転に関与。彼らは銀行振込、不動産取引、保険契約の変更、イタマール氏の遺言書の改ざんを行い、資産がモニケ容疑者の手に渡るように仕組んだ。特に不動産取引の中で、リオ市の高級地区バラ・ダ・チジュカにある家など、複数の高価な不動産がモニケ容疑者の名義に変更されていた。
 マテウス容疑者は19年頃からモニケ容疑者と恋愛関係を持ち始め、2人は電話番号や銀行口座を共有し、不正な資産移動に直接関与した。
 イタマール氏の養子であったジョアン・カルロス容疑者は、20年にモニケ容疑者とイタマール氏が離婚した後も、イタマール氏の行動の監視役を担っており、同氏が入院している間に彼の口座にアクセスして不正に金銭を移動させ、モニケ容疑者やマテウス容疑者に利益を分配していた。イタマール氏が23年7月に亡くなる直前にも金銭移動が行われていたことが確認されている。
 容疑者3人は詐欺、横領、組織犯罪への関与などの罪で起訴され、マネーロンダリングの疑いもかけられている。
 これに対してモニケ容疑者は「自分は無実であり、家族や子供たちのために最善を尽くしてきた。ただ正義だけを信じている」と主張している。

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