RS大水害から10カ月の傷跡=南援協取り巻く厳しい現実=(3)同胞の苦難に支援続く

 昨年4月下旬の大雨で発生した大水害を受け、壊滅的な被害を受けた南部リオ・グランデ・ド・スール州の日系社会の中心となる「南日伯援護協会」(南援協、本部ポルト・アレグレ市、谷口浩会長)。本部施設の被災状況などを受け、南援協は昨年、本部事務所の移転を決めた。位置する地域は今後も大雨になれば洪水のリスクがある。同協会は8、9月の臨時総会で「本部での活動再開は現実的ではない」と説明し、会員から承認を得た。
 水害など災害リスクが低く、アクセスが良いなどを条件に、役員らが移転先を検討。候補物件も見つかったが、書類の関係で断念し、現在は新たな移転先候補を選んでいる。3月に予定されている通常総会の議題にかけ、会員らの声を取り入れながら進めていく。
 移転にあたり、資金面も大きな壁だ。同協会の運営資金は会員約300家族による年会費および寄付、JICAによる補助金などで成り立つ。そのため、本部事務所の設備更新などはほぼされておらず、50年前の設立当初からの家具や物品を大切に使ってきた。
 そんな南援協にとって、移転費用は重くのしかかる。従来の活動に必要な設備などがある施設を購入するには、ポルト・アレグレ市の相場で230万レアルが必要だ。そんな厳しい現状に手を差し伸べたのは、日系社会を中心としたブラジル全土、また日本からの支援だった。

 このうちサンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会(文協、石川レナト会長)は昨年8月から募金活動「ガンバッチェ」キャンペーンを行なっている。「ガンバッチェ」はRS州の方言の最後が「チェ」となることが多いという方言からインスピレーションを受け、「頑張って」と合わせた造語を作り連帯感を示した。文協は昨年5月にも緊急支援物資を援助の「第1弾」として送ったが、今回のキャンペーンは「第2弾」。寄付の使い道は南援協の再建に特化し、被害の詳細が分かる動画も制作した。

ブラジリアンデーのポスター

 このキャンペーンは日系団体やイベント、また実業家フランシスコ・ヒロタ氏らの協力を得て広く周知されている。また、日本では昨年9月に開催された大規模イベント「ブラジルデー」でジョー・ヒラタ氏ら日系アーティストがキャンペーンを紹介した。また、主に日本向けに行ったクラウドファンディングでは約250万円が集まっている。
 寄付の総数は個人・団体含めて500件以上に上り、総額約150万レアルが集まった。このほか、多くの支援物資やメッセージがブラジル内外から届いている。「温かい支援に感謝しかない」と南援協の谷口会長は受け止める。同胞の苦難を共に乗り越えようと、支援の動きは続く。まずは人々が集う拠点再建へ向け、さらなる一歩、二歩が必要だ。(つづく、取材執筆=松田亜弓さん、JICA日系ボランティア)

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