
24年3月にブラジル最南部のリオ・グランデ・ド・スル州イボチに赴任した細川康雄です。赴任時、「ここは夏は暑くて冬は寒いよ」と言われましたが、その通りでした。夏の昼間は40度近くになる暑さ、冬には霜が降りる。雪が降るところもあるそうです。
また、ここでは牧畜が盛んです。隣国アルゼンチンのガウチョ、いわゆるカウボーイがルーツです。こちらでは「ガウショ」と呼び、これがリオ・グランデ・ド・スルの誇りであり、アイデンティティと言われています。
リオ・グランデ・ド・スル州は昨年、4月から5月にかけて豪雨に襲われ、州都ポルト・アレグレをはじめ多くの町が水没しました。ポルト・アレグレの日系団体の事務所も水没し、これまでにブラジルはじめ日本などから多くの支援をいただいたと聞いています。
イボチは州都ポルト・アレグレから北へ50キロぐらいに位置する人口2万人程度の小さな市です。住民の9割がドイツ系と言われており、家並みや建物、人々の顔を見ても、のどかなヨーロッパの田舎のような雰囲気です。市の中心部から車で10分ぐらいのところに日系人のコロニアがあり、私の活動する日本語学校があります。
イボチにある日系コロニアの団体「イボチ日伯文化体育協会」は会員200人程度の小さな団体ですが、学校を中心に卓球、ゲートボール、ソフトボールそしてコーラスやカラオケ、運動会、演芸会、餅つきなど熱心に活動しています。
そして昨年、新たに和太鼓クラブがスタートしました。聞くところによるとブラジルにはたくさんの和太鼓チームがあり、日系人だけでなく多くのブラジル人も楽しんでいるということで、ブラジルでの太鼓パワーに驚いています。私も和太鼓クラブに参加してほぼ初めて太鼓をたたきました。また子どもの時以来何年かぶりに盆踊りを踊ったりしました。
日本語学校は、私塾的な性質で仕事が終わった平日の夜や土曜日の午前に授業があります。生徒は日系人と非日系人混在で、趣味のアニメやゲームの日本語をもっと知りたいという人や、日系企業に勤めていたり、日本への興味を持つ人が多いです。祖先の言葉(継承語)としての日本語を学んでおきたいという人もいます。

それだけに授業は講義というよりも、日本語を楽しく使えるという雰囲気を大切にしています。もともとは大阪のテレビ局でニュース関係の仕事をしていて、定年後に日本から一番遠いブラジルにある日系社会とはどのようなものか知りたくて、協力隊に応募しました。ですから教師としてはまだまだですが、面白いことをして関心を引くことはできるのではないかと思っています。今この学校で授業を受けている子供たち、大人たちが将来、日本の文化に触れた時に「あ、それ知ってるよ!」と言ってくれる機会があればうれしいです。
今年は日系人のイボチ入植60周年の記念の年に当たります。昨年はその記念行事の第一弾としてドキュメンタリー映画の製作が行われました。イボチは比較的新しい入植地でまだ1世の方も残っておられます。記念の上映会では、自分の生きてきた記録が残せたと感慨深く思いを語る人もいました。
さらに60周年記念の本を作ることも決まり、特別チームが立ち上がり、1世の方の聞き取りや資料収集などが始まっています。このような機会にイボチで活動している私はとても幸運だと思います。残りの任期、授業や様々な活動にできるだけ協力していきたいです。