15年ぶりブラジル公演=ロベルト・カザノバ一家が魅せる

 日本在住のブラジル人歌手ロベルト・カザノバさんとミカ・ダ・シルヴァさんが、夫婦で15年ぶりにサンパウロ州を訪れ公演を行う。今回は、2人の音楽を聴いて育った愛娘リナさんとマリアさんによるダンスユニット「SHI-MA-I」と共に、家族揃って初めてブラジルでショーを行う。
 ロベルトさんは幼少期にリベルダーデ地区に住んでいたことから日本の文化に興味を持ち、カラオケバーの店主にすすめられ歌手としてブラジルカラオケ大会に参加し、ポップス部門で優勝。持ち前のダンスパフォーマンスと甘い歌声で人気者となり、当時ラジオパーソナリティをしていたセルソ・リキオ氏によって、数多くの女性を魅了したイタリア人作家にちなんだ『カザノバ』という芸名がつけられた。
 96年には日本のカラオケ大会に出場するための航空券を贈呈され、静岡県に4日間滞在した。富士山の雄大な景色に心を打たれていると、同行者が「ロベルトの未来はここにあるかもしれない」と不思議な予言をした。その後、2001年に腎不全のため腎臓移植を経験。3年間の血液透析を受け、ステージ復帰を果たすまで回復した。

ロベルトさん一家。左からロベルトさん、マリアさん、リナさん、ミカさん

 一方、妻のミカさん(静岡県出身)はジャズを歌いライブ活動を行う中、ボサノヴァに興味を持ち2005年単身渡伯。音楽という共通点がある二人は友人夫婦を介して知り合った。ノリが良い日本の歌謡曲を歌うロベルトさんとゆったりとしたボサノヴァを歌うミカさん。音楽的には正反対だが、ミカさんは「人間性に惹かれあった」と話す。2006年に2人は結婚し、静岡県で生活をはじめた。あの予言は当たったのだ。

 ボサノヴァは今も日本で人気があるが、ブラジル文化は知られていないことも多い。ミカさんは歌詞の意味やブラジルの生活様式などをトークに取り入れ、その活動が讃えられブラジル文化普及に貢献した者に贈られるプレスアワードを受賞した。
 ロベルトさんは工場勤務をしながら、2010年NHKのど自慢チャンピオン大会で五木ひろしの名曲「契り」を歌い見事日本一に輝いた。これを機に日本だけでなくブラジルの有名番組にも出演し、夫婦での音楽活動が本格的にはじまった。
 ロベルトさんが得意とする日本の歌謡曲をブラジル音楽と融合させ、幅広い層に楽しんでもらえる独自のスタイルを作り出し、現在はソロ、またはデュオで日本各地のショーやワークショップ、月一回FMラジオ配信を行っている。

演奏中のロベルトさんとミカさん

 パンデミック中は公演中止が相次ぐ中、自宅からライブ配信に挑戦。2人で構成を考え、音響機器や空間にも工夫を凝らした。ポルトガル語で日本について発信するフェイスブックページ「Japão Aqui」で配信をはじめ、フォロワーが12万人に。当時から配信を見ていたブラジルのファンも今回の公演に駆けつけてくれるという。
 ロベルトさんは「小さい頃からお菓子売りをして家族を手伝いました。その頃からお客さんに『ありがとう』と伝えることを覚えました。今も歌うときはお客さんの目を見つめながら心を込めて歌い、終演後はお客さんと握手やアブラッソをします。それに慣れていない日本の人たちも喜んでくれます。私は日本語でうまく気持ちが伝えられない時がありますが、歌を通して伝えられるのではと思っているのです」と話してくれた。
 ミカさんは「日本とブラジルの両国で演奏している私たちは、両国の違いに戸惑うこともありますが、どちらにも良い面があります。良いところを尊重し、これからも両国で助け合っていけたらと思います」と、語る。

文協公演のチラシ

 一家は25日にブルーノート・サンパウロで公演を行った後、27日にサンパウロ文協大講堂、4月5日にモジ・ダス・クルーゼスの秋祭りに出演する。(取材執筆=島田愛加さん)

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