新給与担天引きローンが好調=3億レ超融資、リスク指摘も

労働者手帳デジタル版(Foto:Marcelo Camargo/Agência Brasil)
労働者手帳デジタル版(Foto:Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 ルーラ政権が打ち出した、正規労働者向けの新たな給与担天引きローン「労働者クレジット(Crédito do Trabalhador)」が21日に施行され、25日午後5時時点ですでに4万8170件の契約が結ばれ、合計で3億4030万レアル(89億円相当)以上が支給されたと、25日付連邦政府ニュースポータルなど(1)(2)(3)が報じた。
 最近のクレジットに対する高い需要に応じて導入されたこの融資は、庶民向けに低金利で提供され、融資を利用しやすくすることを目的としている。低金利の理由は、返済が労働者の給与から直接差し引かれるため、金融機関にとって返済の確実性が高まるからだという。
 ローン申請はデジタル版の労働手帳を通じて行われ、月々の返済額は労働者の月収の最大35%を上限に設定される。平均的な融資額は7065・14レアルで、月々の返済額は333・88レアル、返済期間は21カ月となっている。
 融資を受ける際には、最大で10%の勤続期間保障基金(FGTS)や解雇手当の100%を担保として提供するオプションがあるが、これらを提出せずに融資を受けることも可能だ。金融機関は、融資申請者の勤務年数や給与を基に審査を行い、融資額を決定する。
 このローン制度は、急な支出に対応するために設けられたものであり、特に低所得層の労働者が金融市場へのアクセスを得るための手段として注目されている。他の金融機関が提供するより低金利のローンに乗り換えることも可能であり、労働者の選択肢は広がっている。この柔軟性により、利用者はより有利な条件で融資を受けることができる。
 労働省はわずか5日間で4万8千件以上の契約が結ばれたことは、同制度の順調なスタートを示していると評価。政府はこのローンが金融包摂を進め、向こう数年間で約2500万人の労働者がこの融資を利用すると見込んでおり、社会全体の経済的安定が進むことを期待している。
 4月25日以降、すべての金融機関が自社のデジタルプラットフォームを通じてこの融資を提供することになり、より多くの労働者が融資を受けられるようになると予想されている。
 労働者は、複数の金融機関から提供される条件を比較することで、最も有利な金利を選択できるため、返済負担を最小限に抑えることができる。政府は金融機関に対して、すべての条件を透明に提示するよう促しており、労働者が自らの金融状況に最適な選択を行えるよう支援している。
 ただし、25日付イエトエ・ジニェイロ誌(4)は、この制度により低所得労働者が重債務地獄に陥る可能性があるとのリスクを指摘した。全国物品・サービス・観光商業連盟(CNC)のデータによると、ブラジル家庭の約76%がすでに借金を抱えている中で、更にこの新融資制度が始まった。
 IBMECのジョアン・ビクトリーノMBA教授は、「融資の取得がより容易になれば、この状況は悪化する可能性がある」と指摘。その理由として低所得労働者に関して「ブラジルではまだ問題が残っている。数学的計算能力が低い、家計に関する知識が乏しい、将来の個人年金の創設に関心がないなどだ。金融教育がなければ、信用を悪用されるリスクが大幅に高まる」と結論づけた。

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