トランプがブラジル選挙を模範例に=有権者登録に市民権証明を義務化

ドナルド・トランプ米大統領(Foto: @TheWhiteHouse/Fotos Públicas)
ドナルド・トランプ米大統領(Foto: @TheWhiteHouse/Fotos Públicas)

 ドナルド・トランプ米大統領は25日、米国の選挙規則を変更する大統領令に署名した。この公文書では、選挙で投票するためには米国市民権の証明が求められると規定され、選挙登録のセキュリティ面に関してブラジルやインドを模範例として挙げた。25日付フォーリャ紙など(1)(2)が報じた。
 大統領令の冒頭に「米国は、先進国や開発途上国を問わず、多くが採用している基本的な選挙保護措置を実施することに失敗している。例えば、インドやブラジル国は投票者の識別を生体認証データベースと結びつけているが、米国では主に市民権の自己申告に頼っている」と記されている。
 この大統領令で最も重要な変更点は、選挙時に市民権の証明を求めることだ。トランプ大統領は不法移民が投票に参加したという疑惑を繰り返し指摘。米国では不法移民の投票は許されておらず、その場合には有罪判決、罰金、強制送還の対象となる可能性がある。
 同公文書では「複数の連邦法は、外国籍市民の投票または有権者登録を禁じているが、各州の市民権確認は不十分であり、司法省もこれを強化していない」と指摘。トランプ氏と支持者は、2024年大統領選でもバイデン政権が不法移民を投票者として登録したと主張。16年にはヒラリー・クリントン氏に対し、不法移民による不正投票がなければ自分が一般投票でも勝っていたと発言した。
 データによると、選挙で投票を試みた不法移民の数はわずかだが、昨年9月に発表された市場調査会社「イプソス」調査によると、米国人の1/3が「不法移民が投票するだろう」と回答し、共和党支持者の間では65%に達した。
 大統領令の主張に対する矛盾の一例として、米シンクタンクのブレナン・センターが指摘したものがある。16年、42の選挙区で、2350万人の投票者を監督していた当局が、不法移民の投票疑惑で約30件を調査に回した。だがこの数は、同地域での投票総数の0・0001%に過ぎない。
 大統領令の中で、トランプ氏は米国の選挙制度と比較して、安全性が高いと考える他の実践例も挙げている。例えばドイツやカナダでは、投票用紙の使用を義務付け、地方の職員によって公開の場で集計されるため、米国における選挙方法が引き起こす基本的な文書の問題や追跡の問題を大幅に減少させていると指摘。選挙登録に関する連邦法に従わない州に対しては、連邦政府の資金提供を撤回する可能性も示唆している。
 現在、米国上院では市民権の証明を選挙時に要求する内容の法律案を審議中だが、今回の大統領令は議会での議論や決定を待たずに施行されることになる。
 市民権団体や一部の州当局は、この要求が市民権を有する人々の投票権を奪う可能性があることを懸念している。23年の調査によると、米国の投票年齢の市民のうち9%にあたる約2130万人が市民権を証明する書類を容易に入手できないと推定されている。米国には、連邦レベルで有効なIDや納税者番号(CPF)などの識別証明書が存在しない。
 米国憲法は選挙の実施方法に関する権限を各州に与えていることから、この大統領令はトランプ政権における新たな司法問題の焦点となる可能性が高い。トランプ氏の命令は強制送還に関する命令からトランスジェンダーの軍隊入隊を禁じる命令まで多岐にわたり、裁判所での訴訟や一時的な差し止め命令の対象ともなっている。
 トランプ氏とその支持者は、司法府やこれらの事件を担当する裁判官への攻撃を強めており、専門家たちは、トランプ政権が司法の命令を遵守しない場合、権力間での危機が発生する可能性があると警告している。

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