
イタリア政府は3月28日、血統に基づく市民権付与(ius sanguinis)に関する改正法を施行し、申請資格をイタリア国内で出生した市民の子、または孫に限定すると決定した。この改正は副首相兼外務大臣のアントニオ・タイヤーニ氏によって推進され、イタリア市民権を求める数千人のイタリア系ブラジル人に影響を与えると同日付インフォ・マネーなど(1)(2)が報じた。新規定は4月1日午前0時(イタリア時間)から適用され、これ以降の市民権申請は新基準に従うことになる。
ブラジルには世界で最大規模のイタリア系コミュニティが存在する。在ブラジル・イタリア大使館によると、国外に住む約650万人のイタリア国民のうち、70万人以上がブラジルに住んでおり、これは全体の約11%に相当する。さらに、ブラジル国内には約3千万人のイタリア系子孫がいると推定され、欧州で居住就労できる利便性を求めて、毎年多くの人々がイタリア市民権の申請を行っているという。
1992年に制定されたイタリア市民権法では、子孫であれば、言語や文化的な繋がりがなくとも、4世や5世の子孫でも市民権を申請できた。2023年のイタリア市民権の認定総数は6万1300件に達しており、そのうち4万2千件がブラジル人に与えられ、全体の約68・5%を占めた。
申請者の多くは手続きを早めるために3千ユーロの費用で専門サービスを雇うほどになり申請数を急増させた。このためイタリア政府は「パスポート産業」とも称される状況を抑制すべく、規制強化を決定し、申請資格を制限することで、市民権乱用や商業的目的での取得を防ごうとしている。
3月27日午後11時59分までに申請を行った人々に関しては、新規定による影響を受けない。また、すでに旧規則に基づいて市民権を取得した人々がその権利を保持することは保証されている。だが、現在6万件以上の市民権申請が未処理となっており、これらの申請者は新規定の影響を受ける可能性がある。
イタリア政府は新たな規制施行に合わせ、過去に市民権を商業目的で扱っていた代理店に対しても取り締まりを強化している。特にイタリア国内での市民権申請手続きにおいて、申請費用の引き上げが行われ、手数料も従来より高額となっていることが問題視されている。
今回の変更については、イタリアの法律専門家や移民弁護士からも賛否両論がある。特に移民弁護士の中には、この変更がイタリア系子孫の権利を制限することになるとの懸念を示す声もあり、議会での承認後に、さらなる法的対策や調整が必要とされる可能性もある。だが、政府はすでに議会での多数派を確保しており、法案成立に向けて大きな問題が起こることはないと見られている。
イタリアの人口減少に伴い、国外に住むイタリア系市民の貢献が重要視される中で、血統に基づく市民権の制限が経済や社会に与える影響についても議論が続く。イタリア系子孫が経済的な貢献をしようとする動きがある中で、この新たな規制が果たして有効であるのか疑問の声も上がっている。「申請者は慎重に動くべき」と専門家は警告している。