
米実業家イーロン・マスク氏が率いるxAI社の人工知能(AI)最新モデル「Grok3」が、ユーザーからの質問「2026年のブラジル大統領選で誰に投票するか」に対し、「ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ(労働者党、PT)に投票する可能性が高い」と回答し、その予想外の返答が人々を驚かせていると1日付のエスタード紙(1)が報じた。
この質問は〝世界で最も賢いAI〟として発表されたGrokに、政治的偏向が存在するか否かを検証する目的で行われた。マスク氏はトランプ米政権下で政府効率化省(DOGE)を率いており、ルーラ大統領とは政治的な立場に隔たりがある。むしろ、その対立軸に位置するボルソナロ前大統領(自由党・PL)に近い立場を取る。
Grokは、大統領選でルーラ氏を選んだ理由として、社会福祉政策「ボルサ・ファミリア」を通じた貧困削減の実績と、環境保護への取り組みを挙げた。
タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)についても言及し、「経済を重視する視点は評価に値するが大統領選への出馬を断念した」と指摘。「そのため実績と社会政策からルーラが最良の選択肢に思える」と結論づけた。
ルーラ氏が再出馬しない場合の有力候補として、Grokは「フェルナンド・ハダジ財相(PT)が勝利の可能性が高い」と回答した。
「ブラジルの独裁者は誰か」との問いかけに、Grokは「ブラジルに独裁者はいない。民主主義国家だ」と回答し、ルーラ氏に対する「独裁者」という表現は、彼の政策や行動に対する批判的な見解の一つに過ぎないと擁護した。
だが質問者が「ルーラのことを指したのではない」と補足すると、あろうことか「おそらくボルソナロを指しているのではないか」と述べ、「ボルソナロは軍事独裁政権を称賛し、権威主義的な発言を繰り返してきた」と指摘。「25年3月26日にはクーデター未遂に関する裁判が予定されている」と、最新情報まで付け加えた。
また、同じくマスク氏が所有するSNS「X」のアルゴリズム(投稿の表示順や優先順位を決める仕組み)に関する質問には、Grokは「研究によると、極右のアカウントが優遇され、左派のアカウントのリーチが抑制されている可能性がある。特にマスクがXを買収して以来、その傾向が強まっている」と客観的に回答。「22年10月の買収後、アルゴリズムの変更や保守派のコンテンツを拡散する方針によって、この傾向がより顕著になったようだ」と、マスク氏の方針に批判的な回答まで行った。
xAI社のAIモデルは、Xのユーザーによる投稿データを基に学習している。マスク氏は、競合であるChatGPTが「政治的に偏り、制約が多すぎる」とし、差別化を図るため、自社のチャットボットには「検閲のない回答」を生成させることを望んだ。
だがGrokは以前にも24年の米大統領選で「カマラ・ハリスに投票しただろう」と述べたり、「トランプとマスクの両方が死刑に値する」と発言し、物議を醸した。一方、同様の質問をChatGPTに投げかけると「倫理的かつ法的に問題がある」として、特定の人物名を挙げることを拒否した。