
最近見た日本アニメ「鬼滅の刃 無限城編」で特に印象に残ったシーンがあります。それは、お館さま(産屋敷耀哉)と鬼舞辻無惨が初めて対面した時です。お館さまは、主人公竈炭次郎が所属する鬼殺隊を統率するカリスマ司令塔で、鬼舞辻無惨は鬼のリーダー(ラスボス)です。実はこのふたりは親戚関係にあり、一族から鬼を出してしまったことで産屋敷一族は代々短命であるという呪いを背負わされています。
千年もの間敵対し、鬼舞辻無惨を討伐することを悲願としてきたお館さまに、鬼舞辻無惨がこう言います。「私が好きなものは不変、完璧な状態で永遠に変わらないもの」。それに対してお館さまは「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なのだよ」とやわらかく諭します。
人の想いといえば…今から110年前、ブラジルで暮らしていた日本人の強い想いに多くの方が賛同、協力し、サンパウロに大正小学校が誕生しました。
そこには日本式の学校で子どもたちに教育を受けてもらいたい、日本に帰っても通用する日本魂と日本語を持ち続けてほしいという想いが込められていました。
多いときで約200人の生徒が通ったこの小学校では、日本の教科書を使って授業が行われ、課外活動で野球部、陸上部、相撲部などがあり、学芸会や遠足など情操教育にも力を入れていたそうです。
実際に大正小学校へ通われた川村真倫子先生はインタビューで「大正小学校で学んだ日本語は日本でも引けを取らないくらいであった」「日本の心を教えようとしてくれていた」と答えています。
1919年に、日本人学校として始めてブラジル政府に私立公認校として認められた大正小学校を支えた先生方、関係者や父兄会のみなさまの想いはブラジル各地にも受け継がれ、1939年には約400校の日本語学校が出来ていたそうです。
多くの卒業生を輩出した大正小学校は1966年に閉校になりましたが、その想いは消えることなく現在まで引き継がれています。

昨年、私の配属先で日本語教育の中心的な機関であるブラジル日本語センター(CBLJ)と、JICAブラジル事務所、国際交流基金サンパウロ日本文化センター、サンパウロ大学の4団体が、大正小学校に込められた想いを掬い取り、実行委員を立ち上げ、一般公募で公式ロゴを決めました。
このロゴをシンボルに、今年1年を通じて日本語教育関連のイベントを開催して行きます。2月1日にブラジル日本移民史料館8階で開催された旧大正小学校開校110周年記念特別展(開催期間2月1日~2月28日)の会場では、大正小学校の想いを受け継いでこられた日本語教育の関係者、先生方の表彰式が行われ、私も立ち会うことができました。この時、想いというものが受け継がれていく流れに触れることが出来たような気がして嬉しさを感じました。

出会いは一期一会であり、イベントも期間があります。しかし大正小学校を作ってくださった方々の想いや、110年もの間ブラジルの各地で日本語を守り続け継承してくださった方々の想い、現在も生徒を育ててくださっているすべての日本語教師の想い、それを掬い取って次の流れをつくった旧大正小学校開校110周年イベント実行委員会のメンバーの想いは永遠に続いていってほしいと心から思いました。