
かつてブラジルでは弁当(marmita)は低所得者層の食事と見なされ、質素な食事というイメージが強く、弁当を持参することに抵抗感を持つ人が少なくなかった。だが現在はその概念が変わりつつあり、特に高所得者層において、自己管理や健康維持の一環として注目を集めている。
ブラジルでは昨今、自家製弁当の利用が急増しており、世帯収入が8千レアル(約21万円)を超えるA・Bクラスの家庭で顕著に現れているという。これらの層で職場に弁当を持参する回数は1年で2倍になり、利用割合は36・5%から41・5%に上昇した。主な要因として外食の値上がりが挙げられるが、健康志向も影響していると3月29日付オ・グローボ紙など(1)(2)が報じた。
マーケティング企業「カンター」の調査によると、2023年と24年の第4四半期を比較すると、弁当の持参回数は4600万回から112%増加し、9830万回に達した。この増加は外食費が同期間に23%上昇したことや、オフィス勤務の再開が影響したと考えられている。ただし、高所得世帯にとっては、パンデミック後の生活習慣の変化、特に健康意識の高まりが大きな要因であると、専門家らは指摘している。
この傾向を受け、企業もこのニッチ市場に注力し始めており、高級鍋ブランド「ル・クルーゼ」は3月、ブラジルでも「オン・ザ・ゴー」シリーズの販売を開始。これは飲み物や食事を持ち運ぶための密閉性の高い容器で、デザイン性と機能性を兼ね備えたモデルとして注目を集め、従来の弁当のイメージが覆されつつある。
カンターのシニアマネージャー、レナン・カヴァリエリ氏は「健康を重視するため、食事の質が優先されている。実用性、健康、食事バランスを重視し、甘いものやジャンクフードとの接触を避け、自炊したものを食べることが重要だとの認識が広がっている」と説明した。
ESPMの消費者行動学の教授カリーネ・カラン氏は、即時消費が主流となる現代において、自己ケアを重視するライフスタイルが逆行的に広がっていることを指摘し、その背景にはSNSで健康的な食事やレシピ、食材選びに関する情報が多くシェアされ、人々の食に対する意識や価値観を変える要因となっていると説明した。
外食の平均的な価格が1食50レアルなのに対し、その金額で月〜金までの一週間の弁当を作ることが可能だとされている。栄養士クレイトン・カマルゴス氏は、インフレが進行する中で、満腹感と栄養価の両方を提供する安価な食材への切り替えが可能であると指摘。例えば、あまりブラジルでは消費されない豚肉や、季節の野菜を使うことでコストを抑えられると説明している。
加えて、外食の価格が上昇した一方で、その品質が低下し、選択肢も減少したため自分の食事を持参するようになったとの意見も多い。24年の広範囲消費者物価指数(IPCA)は4・83%で終了し、今年の2月には1・31%という22年ぶりの最高値を記録した。食品・飲料業界は0・70%の上昇を記録しており、今後も弁当の需要が増加すると予測されている。