【8日の市況】Ibovespaは前日比1.32%安の12万3931.89ポイント=ブラジル市場は4日続落、ドルは一時6レアル台へ

 米国と中国の間で貿易摩擦が再び激化し、関税戦争の様相を呈している。米国が中国からの輸入品に対して104%という過去に例を見ない高関税を発動すると発表したことで、世界の金融市場に警戒感が広がった。ブラジルの代表的な株価指数であるIbovespa(イボベスパ)は4営業日連続の下落となり、前日比1.32%安の12万3931.89ポイントで取引を終えた。通貨市場でもレアルが下落し、ドルは一時6.00レアルを上回る水準まで上昇した。
 今回の関税措置は、中国が先週導入した対米報復関税に対抗する形で米国が発動したものであり、両国間の緊張は一段と高まっている。米国は既に、すべての輸入品に対して10%以上の「基本関税」を課す政策に踏み切っており、今後も特定国に対する「調整関税」の導入を検討している。

米政権、「報復は誤り」と主張 各国に個別交渉を打診

 トランプ前大統領の広報官であるカロライン・レヴィット氏は、現地時間8日に行われた記者会見で「中国は交渉を望んでいるが、報復に出たのは誤りだった」と述べ、強硬姿勢を崩さなかった。レヴィット氏はまた、「関税引き下げの交渉は、米国労働者と貿易収支に利益がある場合に限る」とも明言しており、米国側が当面の譲歩を否定していることが明らかになった。
 米政権は現在、韓国、日本、イタリアなどの主要な貿易相手国と個別協議を開始しており、「各国ごとに関税条件を再交渉する」というアプローチを進めている。米政権は「アメリカは他国を必要としない。他国がアメリカを必要としている」との主張を繰り返しており、今後の国際貿易秩序への影響が懸念される。

世界市場に波及、NY株は大幅反落 欧州・アジアも不安定化

 関税発動の報道を受けて、8日の米国株式市場では主要3指数がいずれも急落。ダウ平均は一時3%超上昇する場面もあったが、終値では大幅反落した。中国の報復姿勢を受けた米国の更なる対抗措置により、市場参加者の間で「全面的な貿易戦争」に対する懸念が再燃した。
 欧州市場では、一部の国が報復関税の検討に入っており、欧州委員会は米国産の大豆、ナッツ、ソーセージに対し25%の関税を課す案を準備している。ただし、バーボン・ウイスキーなどの象徴的な製品はリストから外されているという。
 アジア市場では、日本政府が米国との協議に応じる姿勢を示したことが一定の安心感を与えたが、全体としては不透明感が支配している。日本側は経済再生担当相の赤沢亮正氏を交渉責任者として派遣する方針を明らかにした。

ブラジル市場も動揺 株・通貨ともに売り圧力

 ブラジル市場では、株価・為替ともに大きく動いた。Ibovespaは1.32%安となり、4営業日で合計7000ポイント超の下落となった。ドル・レアル相場では、ドルが一時6.00レアルを突破し、終値は5.9985レアルと約3カ月ぶりの高値水準を記録。通貨安により、将来的なインフレ懸念も高まっている。
 債券市場では、将来の金利水準を反映するDI(通貨先物金利)が全期間で上昇した。利回り上昇は金融引き締め観測を強める要因となっており、国内経済への影響も無視できない。

主力株に売り圧力集中、ヴァーレは5%超安

 個別銘柄では、資源大手ヴァーレ(VALE3)が5.48%安、国営石油会社ペトロブラス(PETR4)が3.56%安と、エネルギー・資源セクターに大きな売りが出た。国際原油価格の軟調さも影響している。
 金融セクターでも下落が目立ち、ブランデスコ(BBDC4)は2.75%安、サンタンデール(SANB11)は1.51%安となった。唯一、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は0.03%の小幅上昇を記録したが、全体的には防戦一方だった。
 小売業では、マガジン・ルイザ(MGLU3)が13.41%安と急落。大手金融機関による投資判断の引き下げが影響した。また、スーパーマーケットチェーンのアサイ(ASAI3)は4.24%安と大きく売られた。

一部銘柄は逆行高 防衛的セクターに資金流入

 市場全体が下落基調となる中で、航空機メーカーのエンブラエル(EMBR3)が0.82%高となるなど、一部銘柄は上昇。エンブラエルは「米国の関税措置は2025年の業績見通しに影響を与えない」との見解を示し、安心感が広がった。
 また、保険セクターではBBセグリダーデ(BBSE3)が0.95%高、カイシャ・セグリダーデ(CXSE3)が2.58%高と、防御的銘柄が買われた。いずれも大手金融機関によるポジティブな分析が背景にある。

今後の焦点は米FRB議事録とブラジル小売統計

 9日には、米国連邦準備制度理事会(FRB)の3月会合議事録が公表される予定で、今後の金融政策の方向性を探るうえで重要視されている。また、ブラジルでは2月の小売売上高統計が発表される予定で、内需の動向が注目される。
 市場関係者は「現在の状況は“地政学的地震”に例えることができる」と述べ、今後もしばらくは市場のボラティリティが高まると見込んでいる。

最新記事