
「家族の伝統行事なので、私が生まれた16年前以前から灯ろう流しに参加しています」―キモト・サオリ・レチシアさん(16歳、4世)に、小雨がそぼ降る夕暮れの池のほとりで「いつから参加しているか」と質問したら、そう答えてほほ笑んだ。モジ・ダス・クルゼス文化協会(以下モジ文協、津田フランキ理事長)が主催する「第38回モジ秋祭り」(青柳ダニエル実行委員長)が5日(土)にスポーツ・センター(Av. Japão, 5919, Porteira Preta)で開幕し、夜には敷地内の池で恒例の灯ろう流しが行われた。
夕暮れ迫る池のほとりで手に灯ろうを持った参加者は100m以上の長蛇の列となり、僧侶による読経が響く池のほとりで、まず焼香してから灯ろうに火を入れ、水が流れる滑り台から次々に池に流した。
灯ろうの壁面には「愛」「健康」「金運」「平和」「知」などの漢字が習字で書かれ、池の上にはちょうちん行列のように灯ろうがゆっくりと流れていき、幻想的な風景を演出していた。地元の小学校も参加しており、授業の一環として制作し、ポケモンなどのアニメキャラクターなど思い思いの絵を描いてある灯ろうもあった。

現場責任者、森西カルロス進さん(69歳、2世)はモジに住み始めた32年前から、これを手伝っているという。「今日だけで500基の灯ろうが流された。来週もきっと同じくらいになるのでは。日本ではお盆の行事だが、ここでは秋にやっています」と説明した。森西さんが来る以前から灯ろう流しは行われていたという。
秋祭り会場入り口の建物には、この秋祭りの原点といえる農産展が開催され、今年は同じ建物の中に文化部門の展示も並んだ。農産展ブースの受付にいた上田耕作さん(74歳、熊本県出身)によれば「今年は天候不順で出品された農産物が例年の半分ぐらい」とのこと。

農産展責任者の奥山マリオさん(68歳、2世)に聞くと、「今年は気候が良くなかったから作柄が良くなかった。その分、生産者の技量が問われる年で、その中でも思った以上に農産展に出品があったことは、本当に誇らしいと思います。アウト・チエテ地方の農家の心意気がこの農産展に集まっています」と農業者としての思いを込めて語った。
茶道裏千家モジ支部ブースでお茶の説明をしていた松本茂評議会会長(76歳)は、「農産展と文化展示が一緒になったのは今回初めて。日系人は農業と日本文化だから、思いのほか相性が良かったです」と喜んだ。モジ支部を指導する香西宗喜さんも「今日のために、緑・黄・赤に染め上げたきんとんで紅葉の美しい木々を表した和菓子・唐錦を作ってきました」という力の入れようだった。ブラジル人客を中心に一日で数百人を接待するという。

文化展示には日本語学校、生け花、折り紙、漫画アニメの体験コーナーもあり、入場者でにぎわっていた。
灯ろう流しや文化展示のコーディネーターの小野田ハロルドさん(47歳、3世)は「雨なのにこんなにお客さんが来てくれて、驚いている。灯ろう流しも片手に傘、片手に灯ろう持って、ぬかるみ道を歩いて池まで行ってくれている。お客さんに感謝します」と述べた。灯ろう流しは次の週末12日(土)にも、もう一度行われる予定。次の週末12~13日を含めて計4日間で15万人の人出を見込んでいる。