【9日の市況】イボベスパ指数は前日比3.12%高の127,795.93=米、対中関税を125%に引き上げ 他国には90日間の猶予措置 ブラジル株式市場は大幅反発

 9日のブラジル株式市場は、大きく反発して取引を終えた。サンパウロ証券取引所の主要株価指数であるイボベスパ指数は前日比3.12%高の127,795.93となり、前日まで4営業日続いた下落基調に終止符を打った。背景には、米国のドナルド・トランプ大統領が、中国を除く国々に対して導入予定だった新たな関税措置について、90日間の一時停止を発表したことがある。

 トランプ氏は同日、SNS上で「中国が国際市場に対して敬意を欠いている」として、中国からの輸入品に対する関税率を従来の104%から125%に引き上げると発表。一方で、その他の国々に対しては、新関税の適用を90日間猶予する方針を明らかにした。米国政府はこれにより、各国と貿易交渉の時間を確保したい考えを示した。
 市場ではこの方針転換が好感され、前日までの急落を一転、大幅高となった。鉱業・資源関連株が上昇をけん引し、鉄鉱石大手ヴァーレ(VALE3)は5.39%高、石油公社ペトロブラス(PETR4)は4.06%高となった。ヴァーレは過去5営業日で14%超の下落を記録していたが、今回の上昇でその一部を回復した。背景には、同様に上昇した国際原油価格の影響もある。指標であるブレント原油は1バレル=65.48ドルと、前日比4.23%高となった。
 銀行株も堅調で、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は1.83%高、ブラデスコ(BBDC4)は3.74%高、サンタンデール・ブラジル(SANB11)は2.49%高となった。中央銀行が発表した最新データによると、2月の融資実行額は前月比1.2%減となったが、融資残高全体は6兆4,870億レアルと0.4%増加。延滞率は4.5%と、前月の4.4%からやや上昇した。
 また、消費関連株も大きく買われた。食品小売大手のGPA(PCAR3)は18.89%高と急騰し、マガジンルイザ(MGLU3)は11.28%高となった。GPAは企業統治体制の変更をめぐる思惑から、ここ数日ボラティリティが高まっていたが、今回の反発で前週の下落分を大きく取り戻した形だ。
 教育関連銘柄では、コグナ(COGN3)が11.94%、YDUQS(YDUQ3)が3.93%上昇した。米銀バンク・オブ・アメリカが同業界の回復を示唆するレポートを発表したことも支援材料となった。同行は、教育企業のキャッシュフローが改善しつつあるとし、YDUQSを有望銘柄と評価している。
 為替市場でも反応が見られ、発表直後にドルは対レアルで下落に転じた。午後2時44分(ブラジリア時間)時点で、ドルは1.45%安の5.90レアル前後で推移している。
 米国株式市場もこれに呼応し、主要3指数がそろって急騰。S&P500種株価指数は9.52%高、ナスダック総合指数は12.16%高、ダウ工業株30種平均も7.87%高を記録した。
 XPインベストメンツの株式戦略責任者ラファエル・フィゲレド氏は「市場は過度な警戒感をいったん解き、冷静さを取り戻しつつある」と分析。「ただし、関税発表以降の地政学的・経済的影響を引き続き見極める必要があり、ボラティリティが以前の水準に戻るかはなお不透明」とも述べた。
 デイコバル証券のアナリスト、ガブリエル・モロ氏も「市場は今回の発表で割安感が是正されつつあるが、米中間の緊張は依然としてくすぶっており、先行きの不透明感は続く」と指摘。トランプ氏は、中国が今後の協議に前向きな姿勢を示しているとも述べたが、「どのように交渉を開始すべきかはまだ不明」としており、実際の進展は未知数だ。
 Principal Asset Managementのロドリゴ・アシカワ氏は、「今回の譲歩は、トランプ政権が交渉のテーブルに戻る意思を示すものであり、全体として市場には前向きなサインとなった」とする一方で、「対中関係については、今後も激しいやり取りが続く可能性があり、注意が必要だ」と述べた。

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