11日のブラジル株式市場は、主要株価指数であるIbovespaが前日比1.05%高の12万7,682.40ポイントと、1,327ポイント余りの上昇となり、センチメントの改善を映した。週間でも0.34%高と、2週続落から持ち直した。
米中間の関税問題が引き続き市場の注目を集めるなか、中国が米国に対して最大125%の報復関税を課す方針を発表。市場ではこれが交渉戦術の一環と受け止められ、対立のエスカレーション懸念がやや後退した。中国の習近平国家主席は「貿易戦争に勝者はいない」と述べ、事態の沈静化を図る姿勢を強調。一方、米国のトランプ政権も「中国との合意に楽観的」とコメントし、リスクオフムードを和らげた。
この日の為替市場では、米ドルが対レアルで0.46%下落し、1ドル=5.871レアルとややレアル高に。金利先物市場では、全体的に利回りが大きく低下した。
米国景気の減速懸念が強まるなか、トランプ大統領の通商政策に対する国内からの反発も目立つ。米紙によれば、ウォール街の大手企業幹部の間では、関税によるコスト上昇が企業利益を圧迫し、景気後退を招くとの見方が強まっているという。ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「米国経済はすでにリセッション(景気後退)に入っているか、極めて近い状態だ」と述べた。
もっとも、ニューヨーク市場では、トランプ大統領の「合意に向けた楽観的な見通し」発言と、主要銀行の好決算が追い風となり、主要指数が揃って大幅高となった。JPモルガンやモルガン・スタンレー、ブラックロックなどが市場予想を上回る四半期決算を発表した。一方で欧州市場は、米国の発言前に取引を終えたこともあり、下落となった。
ブラジル国内でも経済指標が好感された。2月の経済活動指数(IBC-Br、国内総生産の先行指標)は前月比0.4%上昇と、予想を上回った。農業部門の寄与が大きかったとされる。3月の消費者物価指数(IPCA)は予想通りの伸びにとどまったが、年内のインフレ圧力の継続が懸念されている。
主力銘柄では、鉄鉱石価格の持ち直しを受けて資源大手Valeが1.67%高、国営石油会社Petrobrasも原油高に支えられ1.99%上昇した。銀行株も堅調で、Banco do Brasilが0.87%高、ItaúsaとItaú Unibancoがそれぞれ1.05%、0.51%上昇。小売業ではMagazine Luizaが2.55%高と存在感を示した。食肉加工のMinervaも2.5%高と、対米輸出期待から買われた。
建設・不動産業も強含み、Cyrelaが0.77%上昇。来週以降は祝日による取引日数の減少から、経済指標は限定的となる見通しだが、米中通商交渉の展開が引き続き市場の焦点となる。
XPのベンチモール氏、米経済の減速とドル安を予測 新興国に追い風との見方
同日、サンパウロ市で開催された投資イベント「Advance 2025」に登壇したXPインベストメントの創業者、ギリェルメ・ベンチモール氏は、米国経済の加熱とその急減速について言及。「米経済はフル稼働状態で、どの指標にも余裕がなかった。株式市場も非常に高値圏だった」と述べ、過熱を抑えるための政策対応は避けられなかったとの見方を示した。
同氏は「トランプ大統領には何らかの戦略があるのではないか」と述べ、政権の初期段階で痛みを伴う施策を実行する意図を推察。「ドルは今後、弱含む可能性が高い」とし、ドル安局面では新興国市場が相対的に恩恵を受けやすいとの見方を示した。
また、ブラジル経済については「金利が依然として高水準にあり、財政の均衡化が急務」と指摘しつつ、「極端な状況ではあるが、破綻的なシナリオではない」と述べた。
さらに、同氏は人工知能(AI)の進展にも言及。「私は熱心なユーザー」と語り、AIが投資アドバイザーの情報提供能力を強化し、信頼に基づいた助言の質を高めると期待を寄せた。
コモディティ株に再び脚光 通商摩擦再燃で防衛的資産として注目
米中間の貿易摩擦が激化するなか、ブラジル市場では再びコモディティ関連銘柄に関心が集まっている。XPインベストメントおよびItaú BBAは、Suzano(製紙)、Klabin(同)、Vale(鉱業)、Gerdau(鉄鋼)に注目しているが、見解はやや分かれる。
Itaú BBAは、紙パルプセクターを相対的に有望視。競争力の高い輸出体制、為替の追い風、アジア需要の回復期待を挙げ、SuzanoとKlabinを推奨している。特にSuzanoは、Mato Grosso do Sul州で新工場の稼働が始まったものの、株価には織り込まれていないとし、再評価余地を指摘した。
XPは、Suzanoを投資家間の「コンセンサス銘柄」と位置づけ、2年間で11~15%のフリーキャッシュフローレシオが見込まれると評価。ただし、中国の供給能力回復や為替の不安定さをリスク要因としつつも、年初から16%下落している株価は買い戻しの余地があるとした。
Klabinについては、製品と市場の柔軟性を評価。適正価値を下回る評価で取引されているとし、財務健全化の進展が今後の追い風になるとみている。