
トランプ政権による関税措置で世界が動揺する中、ルーラ大統領が5月初旬、ロシアと中国を立て続けに訪問する予定だと判明した。5月9日頃にまずモスクワ、続いて5月13日に中国を国賓として訪問し、習近平国家主席と会談する予定。今回の訪問では米中間の緊張を背景に、米国の関税政策に加え、ブラジル・中国間のインフラ協力についても協議が行われ、重要な発表がなされる可能性があると10日付フォーリャ紙(1)が報じた。
セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問は、ブラジル・中国首脳会談はトランプ氏による一連の措置以前にすでに決定されていたとした上で、「関税問題は現在の国際議題において明らかに重要な位置を占めており、当然ながら議題に上ることになるだろう」と説明。「中国とブラジルは互いに重要な経済的パートナーであるばかりでなく、両国はBRICSの枠組みの下で国際紛争の平和的解決を目指し、協調して提案を行っている」と述べた。
中国政府は、ルーラ氏を国賓として迎える準備を進めており、中国とラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)との間で当初構想されていたフォーラムとは切り離し、二国間議題に集中する見通しだ。同フォーラムの開催日は依然として未定だという。
アモリン氏によればルーラ氏は習主席との会談に加え、中国政府関係者との複数の会談を予定しており、インフラ分野においてはブラジルの「経済活性化計画(PAC)」と中国の「一帯一路構想(BRI)」との協働に関し、「具体的な進展が見込まれる」と述べた。
中国メルコスル間の通商協定交渉の開始について問われたアモリン氏は、「現時点では二国間協力を重視」とし、「自由貿易とは異なる枠組みを持つ包括的な合意の可能性がある。各地に抵抗があるとしても、重要な合意が妨げられるわけではない」と説明した。
一方、ブラジル政府はトランプ氏による大規模な関税政策の次なる対象として、中国との経済・通商関係が強いラ米・カリブ諸国が含まれる可能性があると見ている。ルーラ氏の国際担当顧問らは、トランプ氏の主要な地政学的対立軸が中国であると認識しており、米政府が関税適用の判断に際して、各国の対中関係の深さを重視すると分析している。(2)
現在、メキシコを除くラ米諸国の多くには10%の「相互的」関税が課されており、ブラジルを含む複数の国がその緩和をめぐり米国と交渉中だ。ブラジル政府内では、対中貿易額や中国によるインフラ投資の存在、BRICSへの参加の有無などの要素が、将来的に関税判断に影響を及ぼす可能性があると見られている。
現時点では、ブラジルと米国の間で進められている関税交渉において、中国との関係が正式に議題となったことはないが、ブラジル政府は米国が今後この要素を交渉に結びつけてくる可能性が高いと見て警戒を強めている。
ルーラ氏は訪中の4日前にロシア政府の招待を受けてモスクワを訪れ、第2次世界大戦におけるドイツ降伏80周年を記念する「戦勝記念日」の式典に出席する予定。アモリン氏は「ロシアでは経済面の議論も行われるだろうが、今回の訪問はむしろ象徴的な意味合いが強い」と述べた。