
アルゼンチン政府は14日、「CEPO」と呼ばれる為替規制を解除し、通貨価値が市場の需要と供給によって決定される新たな為替制度を導入した。これは11日、国際通貨基金(IMF)との間で合意された200億ドル規模の融資に伴う措置であり、6年間にわたり継続されていた厳格な資本規制が実質的に終了した。これに伴い、為替制度は従来の固定に近い管理相場から、1千〜1400ペソ/ドルの変動幅を持つ管理変動相場制へと移行した。14日付インフォ・マネーなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
旧来の制度では、個人によるドル購入が月200ドルに制限され、30%の課税が課されていたほか、企業による外貨送金や対外取引も制限されていた。今回の変更により、銀行口座にペソを保有する人は制限なくドルを購入でき、店舗やオンライン経由での取引、現金の引き出し、外貨預金口座への入金、国外送金が可能となった。ただし、現金でのドル購入については1人あたり100ドルの上限が維持された。
新制度導入初日の14日、公式為替レートは対ドルで、1250ペソまで上昇し、前営業日比で約15%のペソ安となった。市場では、非公式為替レート、通称「ブルーレート」が1285ペソ、金融市場でのMEPやCCLといったレートも1300ペソ未満で推移した。為替がバンドの上限に近づいた場合には輸出業者によるドル供給が見込まれており、季節的な大豆輸出の影響も指摘されている。
今回の措置はIMFからの資金支援と連動しており、2025年中に150億ドルが供与される予定で、そのうち120億ドルは4月15日に即時供給される見通しだ。長年維持されていた「ドルブレンド(複数の為替レートを用いて輸出収益を交換する制度)」制度も終了し、今後は輸出収益の100%が公式為替レートで交換される。企業は今年の利益に関して国外への送金が一部認められることとなり、これまで蓄積された過年度分の配当は段階的に認められる。
これにより、アルゼンチンの資産価格は大幅に上昇した。同国の国債は3・5%超上昇し、新興国市場で2番目の上昇率を記録した。米国市場で取引されるYPFの株式も11%超の上昇を見せた。IMFは今回の改革によって2025年の同国の経済成長率を5・5%と見込んでおり、前年のマイナス1・7%からの反転が期待されている。
インフレへの影響は限定的とされており、3月の市場不安時に価格調整が進んだことから、今回の制度変更に伴う物価上昇は一部にとどまるとの見通しが示された。特に、ストリーミングサービスなどに適用される「カード用ドル(クレジットカードやデビットカードを使用して外国やインターネットで購入した商品やサービスに対して課される特別な為替レート(dólar tarjeta)」や、高・中所得層の電気料金などに影響が及ぶ可能性がある。IMFは2024年に118%に達したインフレ率が2025年には18〜23%まで低下するとの予測を示している。