10年間で校内暴力3倍に=生徒が共謀、教師に復讐

教師刺傷事件の現場となったジョアン・デ・ゾルジ市立校(16日付BBCブラジルの記事の一部)
教師刺傷事件の現場となったジョアン・デ・ゾルジ市立校(16日付BBCブラジルの記事の一部)

 15日付G1(1)によると、ブラジルにおける学校内の暴力事案は、過去10年間で3倍以上に増加し、2023年には過去最多の1万3100件が報告された。23年に報告された暴力事案のうち、半数は身体的暴力であり、次いで心理的・道徳的暴力が23・8%、性的暴力が23・1%を占めた。加害者の35・9%は被害者の友人または知人だった。
 暴力増加の背景には教師職の社会的地位の低下、憎悪表現の軽視、学校設備の老朽化、生徒の家庭内暴力体験、紛争解決体制の不備、人種差別や性差別への教育行政の対応不足がある。自己破壊的な思想や感情を共有・助長するオンライン集団の広がりも、自傷や攻撃的行動を促す要因とされる。
 その一例は1日、リオ・グランデ・ド・スル州カシアス・ド・スルで起きた市立学校の英語教師を3人の生徒がナイフで刺した事件だ。加害生徒らは教師を背後から襲い、計13回も切りつけた。犯行は彼らが数日前にインスタグラム上で作成したグループ「マタドーレス(殺し屋)」内で計画されたもので、動機は教師への復讐だったと16日付BBCブラジルなど(2)(3)が報じた。
 事件直前、加害生徒3人は学校近くのバス停で落ち合った。自分たちが通うジョアン・デ・ゾルジ校に入り、周囲に不審がられることなく教室に向かった。途中、同級生にナイフを見せ「教師を殺すつもりだ」という発言をしたが、この日はエイプリルフールだったため、多くは冗談だと受け止めていたという。
 3人は7年生のクラスで英語教師のルアナ氏(34歳、仮名)を背後から攻撃。ジョアンが最初の一撃を加え、次にチアゴが複数回ナイフで刺した。ルアナ氏が床に倒れた後も攻撃は続き、最終的に13カ所の刺し傷を残した。
 教室はパニックに陥り、校内には「先生が殺された!」と叫ぶ声が響いた。ルアナ氏は頭と背中を刺されたが重傷には至らず、すでに退院している。
 チアゴとジョアンは学校前の林に逃げ込んだが、約4時間後に警察に身柄を拘束された。カミラはナイフを渡されていたものの、犯行には直接加わらなかったため、数時間後に父親に付き添われて帰宅した。
 その後の捜査で加害生徒らがインスタグラム上でグループを作り、使用する凶器や逃亡経路、逃走中の食事に至るまで、犯行計画を綿密に立てていたことが明らかとなった。
 警察の取り調べでジョアンは「教師に『お前には未来がない』と言われてストレスを感じていた」と供述した。事件の5日前、加害生徒3人を含む数名が学校の隣にある保健所を訪れ、無料配布されていたコンドームを教室に持ち帰り、風船のように膨らませてふざけ合っていた。この行動が問題視され、教員から厳重注意を受け、校長室へ呼び出された。この叱責が引き金となり、彼らは食堂で教師への報復を口にし始め、犯行計画へと発展していったとされている。
 事件を受けて地元の教育機関は警察の巡回を強化し、学校の安全対策を見直す措置を検討している。市議会では未成年者の刑事責任を問うために、年齢引き下げを求める動きも出ているという。
 専門家は暴力抑制には一時的な対応でなく、継続的かつ多分野が連携した政策が必要だと指摘。具体的には福祉・司法・医療との連携、学校の在り方の抜本的見直し、人種やジェンダーの多様性を反映した教職員体制、深刻な事案における家庭裁判所の積極関与などが重要とされる。

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