
米中間で激化する貿易戦争――その複雑な構図を、流暢なポルトガル語で鮮やかに解き明かす中国人女性記者が注目を集めている。ブラジルでの滞在経験を持ち、当地に深い親近感を抱く彼女は、この対立によって「真に利益を得るのはブラジルだ」と説く。古代中国史に根差した視点と、実利的な分析を交えながら国際政治の潮流に一石を投じるその言葉は、SNSを中心に多くの共感と称賛を呼んでいると15日付ソー・ノチシア・ボアなど(1)(2)が報じた。
タンリ・ヤン記者(ポルトガル語名はオリヴィア・ヤン)は、自身のSNSに投稿した動画で、米国の強硬な対中関税政策に対し、中国が譲歩せず、代わりにブラジルとの貿易を拡大している現状を説明している。すでに中国はブラジル産大豆の輸入を本格化させており、今後もその拡大が見込まれる。
ヤン氏は「米国は中国に対し145%を超える関税を課しているが、中国の対応は屈服ではなく戦略的な転換だ」と語り、即時的な譲歩ではなく、将来世代への悪影響を見据えた対応こそが中国の基本姿勢だという。
中国は直接対決を望んでいるのではなく、自国文化を大切にし、自国主権を尊重する国々との貿易関係を強化し、適応することに賭けているのだとヤン氏は解説する。
動画の中で、中国の学校教育で教えられる歴史的教訓にも触れている。紀元前221〜206年の秦帝国時代、強権的な統治者たちは平和の条件として他国に領土の譲渡を要求した。相手国が譲歩を重ねるたびに秦帝国は侵攻を進め、最終的に六つの王国を征服したという。これを引き合いに出し、彼女は「譲ることは終わりなき侵攻を招く。だからこそ中国は今、適応を選ぶ」と述べた。
この姿勢は現在の中国の戦略にも通じている。米中対立の中で、中国は経済パートナーを再編し、ブラジルとの関係を強化している。両国間の貿易量は顕著な伸びを見せており、特にブラジルから中国への大豆輸出量は今年第1四半期に1770万トンに達した。これは前年同期比で約700万トンの増加となり、過去最高を記録した。(3)
ブラジルが中国から輸入する品目は非常に幅広く、自動車、機械、電気機器、農薬、有機・無機化合物に至るまで多岐にわたる。一方、中国がブラジルから輸入する主な品目は食料品であり、果物、野菜、農産物、肉類などが含まれる。
ヤン氏は中国南西部・江蘇省出身で、中国コミュニケーション大学でポルトガル語を専攻。ポルト・アレグレとリオに滞在経験があり、ブラジル国籍を持つ息子ヴィニシウス君を育てる母でもある。
単なる記者にとどまらず、両国の架け橋としての役割を自認するヤン氏は、SNSで16万5千人以上のフォロワーを抱え、ブラジル人歌手ゼーリア・ドゥンカン氏など著名人からも支持を受けている。ヤン氏の投稿には「これこそ真の愛国者だ。誇りをもって自国を語り、卑屈な姿勢を見せない」といった称賛の声や、「複雑な問題を、ここまで平和的かつ明快に説明できるとは驚くべき才能だ」と彼女の手腕を評価するコメントが寄せられている。