中銀「世界経済に減速リスク」=金融引き締めの意義強調

ガブリエル・ガリポロ中銀総裁(Foto: Antônio Cruz/Agência Brasil)
ガブリエル・ガリポロ中銀総裁(Foto: Antônio Cruz/Agência Brasil)

 ブラジル中銀のガブリエル・ガリポロ総裁は、米中間で展開される貿易戦争の激化が、当初予想されていた以上に深刻な世界経済の減速を引き起こす可能性があるとして、リスクの高まりに強い懸念を示したと22日付オ・グローボ紙(1)(2)(3)などが報じた。
 これは同日、ガリポロ氏が上院経済問題委員会(CAE)の公聴会で発言したもの。トランプ米大統領による関税引き上げを発端とした国際的な緊張の高まりが、市場動向を左右する「主なベクトル」になっていると指摘。トランプ政権再登場により、かつては市場重視の政権運営が期待されていたが、現在では関税政策に伴う不安定性への懸念が強まっているとの認識を示した。
 ガリポロ氏は、「現在我々が目の当たりにしているのは、リスク回避の方向に進む可能性を秘めた動きだ。この関税戦争がさらにエスカレートすれば、世界経済はより急激かつ強力な減速に見舞われることになる」と明言。そうした局面で投資家は安全資産を志向する傾向があり、国際的な資本の流れに大きな変化が生じると分析。
 同氏は、25年には今後の展開次第で複数のシナリオが想定されるとし、緊張緩和に向けた合意により経済への悪影響が軽減される可能性がある一方、対立がさらに深まり、供給網の混乱が長期的な影響を及ぼすリスクもあると指摘した。
 一方、ブラジル経済には相対的な強みがあり、「多様な貿易構造と堅調な内需が一種の〝安全弁〟になっている」との見方を述べた。国際貿易の国内総生産(GDP)に占める比率が他国に比べて小さいことも、外部ショックに対する耐性として作用していると強調。
 演説の中でガリポロ氏は、ブラジル経済が現在も活況を呈しており、潜在成長率を上回るペースで成長を続けているが、インフレ圧力は生じていないと分析。その状況下では、中銀は「宴会のしらけ役」として加熱ムードに水を差す役割があるとし、必要に応じた金融引き締めの意義を説明した。
 「宴が加熱し、人々がテーブルの上に乗り出すような事態になれば、酒を取り上げなければならない。だが、反対に皆が帰ろうとし始めた際には、『大丈夫だ、今酒が届くところだ。音楽もまだ続く、安心してこの場に残ってくれ』と促す必要がある。常に場の流れに逆らう〝しらけ役〟に徹するのが我々の務めである」と述べた。経済が過熱している場合には「経済を少し抑制することで、暴走的な成長に歯止めをかけ、通貨の安定性を失わないようにするべきである」と説明した。
 景気減速時には金融緩和によって、より有利な金融環境を整えることが求められるとし、「我々としては金融政策の正常化を図りたい。金利水準が他国とより近似し、少量の〝薬〟で同様の効果を得ることができれば、患者(経済)は長期間にわたって高濃度の薬に頼る必要がなくなる」と説明。過度な高金利依存を避ける意義を強調した。
 失業率が過去最低の水準に達し、所得の大幅上昇も見られることから、経済活動の堅調さが金融引き締め判断の根拠であると指摘。「経済を抑制するには、中立金利を上回る水準に政策金利を設定する必要がある」と明言し、現在もその水準が十分か否かを慎重に見極めている段階にあることを明らかにした。

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