JICA=ボランティア隊員の最終活動報告会=日系社会との絆深めた経験を共有

オンラインでのJICAボランティア隊員の最終活動報告会で話す宮崎明博所長

 独立行政法人国際協力機構(JICA)ブラジル事務所(宮崎明博所長)は4月15日、2023年4月および5月に派遣されたボランティア隊員4人による最終活動報告会をオンラインで実施した。報告会には約40人の関係者が参加し、各隊員がそれぞれの活動成果と経験を語った。
 報告を行ったのは、日本語教育担当の森岡弘子さん(兵庫県出身)、料理指導の公平千鶴子さん(山形県出身)、学芸員の林俊宏さん(岐阜県出身)、編集担当の松田亜弓さん(北海道出身)の4人。
 森岡さんは「50年来の夢だった」というブラジルの日系社会への派遣を実現し、小学校教諭を退職後、アチバイア日本人学校で日本語教育に従事。SNSを活用して日本文化教室やイベントを積極的に発信し、生徒数を着任当初の49人から60人へと増加させた。「日系社会が日本以上に日本文化を大切にしていることに感銘を受けた」と語り、自身も日本文化を再認識する機会になったと振り返った。
 公平さんはグアルーリョス市の高齢者福祉施設「憩の園」で、日本食および介護食の指導を担当。特に、日本ではゲル化剤を使用する「ソフト食(介護サラダ)」のレシピをゼラチンで代用する工夫により完成させた。また、施設に献立が存在しないというブラジル独自の運営スタイルにも驚きつつ、明るく臨機応変に対応する職員の姿勢に「ブラジルらしさ」を感じたという。
 林さんはパラー州のトメアス文化農業振興協会(ACTA)にて、VHS映像のデジタル化、資料整理、研究支援などを実施。特に地域に残された音楽資料の発掘に取り組み、「トメアス・ルネッサンスプロジェクト(トメアス伝統音楽復元計画)」を立ち上げた。再現した楽曲を披露するなど、地域文化の再評価と保存に貢献した。
 松田さんは、当初リオ・グランデ・ド・スル州ポルトアレグレ市の南日伯援護協会にて、日系社会をつなぐ機関誌の編集業務を担当。しかし、昨年4月の洪水の影響でサンパウロに移動し、ブラジル日報やブラジル日本語センターでの活動を継続した。3つの団体を通じて「世代交代が進む中で、日系団体の存在意義が問われている」との共通課題を実感。「個人間の結びつきに加え、組織間の連携を強めることが、今後の日系社会の強化につながるのではないか」と提言した。
 報告会の締めくくりに、宮崎所長は「日系社会とJICA、そしてボランティア隊員の結びつきは非常に強い。帰国後も日本のブラジルコミュニティとつながる機会はあるので、この2年間の経験をこれからの活動に生かしてほしい」と隊員を激励した。

最新記事